「母親ペナルティ」に通常以上に気を配る
子どもがいる人はいま、24時間子どもの面倒を見つつ、仕事の期限を守り、同僚とのつながりを維持し、自分の価値をアピールしようと奮闘している。これは、働く母親たちの負担を一段と大きくしてきた。そのことは無数のエピソードや分析に表れている。
男性の場合、子どもの面倒を見ていることが明らかになると、高い評価を得て、温かい目で見られる傾向がある。しかし女性の場合は、子どもやパートナーがいない女性よりも、仕事の能力や意欲を疑われることが多い。
一般の職場では、女性たちはさまざま工夫をして、こうしたイメージを抱かれないように努力している。多くの女性が長年にわたり、会社のデスクに家族写真を飾らないことや、子育ての負担をなるべく話題にしないようにするといった、涙ぐましい努力をしてきた。
仕事上の信頼を維持するためには、こうした工夫をすることは仕方がないのかという議論やその範囲はさておき(そんなわけがない)、女性も職場に来れば、こうしたバイアスを回避する方策を取ることは、ある程度可能だろう。
だが、自宅が職場になったいま、一時的な対策さえ講じるのは不可能だ。
重要なミーティング中に子どもが部屋に駆け込んで来て、音声的ないしは視覚的なバイアスを招くかもしれない。子どもの面倒を見るために、急いで電話を切らなくてはならないかもしれない。ビデオ会議の背景に、子どものおもちゃやクレヨン画が映り込んだり、配偶者が自宅学習についての相談をしてきたりと、親であることを思い出させないスペースを見つけることは不可能かもしれない。
一方、男性の場合、子どもがいることを示す材料(または子ども自身)を目撃されると、むしろプラスの評価を受けることがある。男性の収入には「父親プレミアム」があることは、多くの研究で示されているし、男性は女性よりも子どもの世話をすることで高い評価を得る傾向があることがわかっている。
社員の家族関係や家庭生活が、はっきり目に見えるものになったいま、子持ちの男性と女性に対するバイアスのギャップに気づくことは極めて重要だ。
子育てをしているからといって、女性の仕事上の能力に疑問符をつけることは許されないという環境を、リーダーは推進することができる。また、リーダー自身に子どもがいる場合は、マルチタスキングや家庭における自分の役割の重要性を正直に語ることが、部下たちの助けになるだろう。
いまは「理想の労働者」の規範を推進するときではない。こんなときに、仕事を最優先することを期待すれば、現実をわかっていない冷淡なリーダーだと思われたり、女性はもともと能力や価値が低いというバイアスを強化したりすることになる。