プレッシャーを緩和する
私たちはいま、在宅勤務でいかに多くのことができるかを学びつつある。それは嬉しい喜びでもあるが、バーチャルワークの研究者にとってはなんら驚きではない。研究では、実のところ、リモートワークのほうが平均以上に生産的であることが、ずっと前から明らかになっていたのだ。
ただし、こうした研究のいずれも、現在のような環境で行われたことはないこと、そして現在のような環境では、生産性が上昇するとは限らないことを認識する必要がある。
現在のように不確実性が高く、経営が緊迫しているときは、社員ができるだけてきぱきと働いてくれることを期待したくなるものだ。減益が予想されたり、債権者と交渉したりしているときは、なおさらだ。
だが、そのようなアプローチは、男女を問わず、また、子どもがいるか否かを問わず、社員の気持ちを遠ざけるだけでなく、子育て中の女性を過小評価することになるだろう。
新型コロナのパンデミックが起きる前から、女性のキャリアは不安定だった。ハーバード・ビジネス・スクールの卒業生や、世界の企業幹部の調査から、男性企業幹部は、無職の配偶者の「内助の功」を得ている可能性がはるかに高いことがわかっている。
一方、共働きの家庭では、女性のキャリアは男性パートナーのキャリアの二の次にされがちであることも、筆者らを含む多くの研究でわかっている。いざとなれば、女性は仕事を控えるというわけだ。
子どもが突然、学校にも託児所にも行けなくなったいまほど、「いざとなれば」に該当する時期はあるだろうか。高学歴の女性たちが仕事を控える最大の理由は、本人たちがそれを望むからではなく、自分の貢献度を過小評価し、女性のニーズに見向きもしない職場から追い出されるからである。
企業は、働く親が直面する課題を認識し、対策を講じなければ、ますます多くの女性を追い出すことになる。対策を講じれば、男女を問わず、子育て中の社員に恩恵をもたらすだろう。とりわけ、幼い子どもを抱える女性が受ける恩恵は大きい。
リーダーは、社員に無理な労働時間や努力を求めるのではなく、優先事項とビジネスニーズを厳しく見極める必要がある。真に重要な仕事は何かを判断して、社員にその人なりのベストを尽くすよう求めよう。合理的に期待される労働時間を設定すれば、社員のエンゲージメントを飛躍的に高められるはずだ。