デジタルスペースをインクルーシブに

 過去の研究から、男性は、同僚たちと個人的かつ緊密な関係を構築して恩恵を得るが、女性はさほど個人的ではなく、より事務的な関係を築くことがわかっている。バーチャルな社交環境は、このギャップを悪化させるだろう。つまり女性が加えてもらえるのは、主にフォーマルな情報チャネルになる可能性が高い。

 事実、バーチャル会議は、当事者にしかわからない内輪の会話という、新たな「仲間外れ」の方法をつくった。マネジャーはミーティング中も、別ウィンドウでチャットができる。そこでグループでの決定と矛盾する計画を思いついたり、他の出席者について不適切なコメントをしたりすることもありうる。

 こうした目に見えない会話は、積極的な差別的でないかもしれないが、人間関係を固定化し、「部外者」が入っていくことを不可能にする。非公式だが重要なチャットから排除された女性は、自分から議論に加わることはできないし、信頼できる同僚に、そうした議論の存在を教えてほしいと頼むことさえできない。

 この種の内輪の会話を完全に禁止することはできないかもしれないが、リーダーは自分のチームに注意を喚起することはできる。ミーティングを始める前に、出席者は自分の意見を全員に伝えるべきであり、特定の人物を排除した会話は認めないと注意してもいいだろう。問題コメントやチャットを発見した場合は、そのようなやり取りは許されないことと、処分の対象になることを明確にしよう。

 ミーティング以外のバーチャルな交流も、障害となる可能性がある。あらゆる交流がオンラインになったいま、スラックに特別につくったチャンネルや、フェイスタイムを使った軽い飲み会で交流が図られることもあるだろう。こうしたバーチャルイベントから女性を排除するのは、実に簡単だ。

 親しい仲間だけで集まる計画を知られることもなければ、仲間外れにされたという決まりの悪い思いをさせることもない。この種のバーチャルな集まりは、男女による仕事上のネットワークのギャップを広げる可能性がある。

 リーダーは、空き時間の使い方まで部下たちに指示を出すことはできないが、チームビルディングや社交イベントに関しては、インクルージョンを気にかけるよう注意を促すことはできるだろう。リーダー自身が、特定の人とのインフォーマルな交流に時間を使いすぎないようにして、模範を示すこともできる。マネジャーたちに、インクルーシブな文化を推進する責任を思い出させるのもいいだろう。

 アフターコロナの世界は、女性をうまく活用している会社と、そうでない会社がはっきり分かれるだろう。あなたがそのどちらに属することになるかは、偶然決まるわけではない。

 もちろん現在の最優先事項は、社員の基本的なウェルビーイングと安全だが、その過程でジェンダー・インクルージョンを置き去りにする事態を許してはならない。さもないと、深刻な女性の人材流出が起こり、現在の危機を乗り切り、未来の成功のために必要な有能な労働者とリーダーを失う恐れがある。

 あなたはリーダーとして、女性のキャリアが新型コロナ危機の犠牲になるのを傍観せずに、女性社員のコミットメントを高め、その貢献を最大化することができる。それは、男女平等に向けた社会の進歩を維持するだけでなく、あなたの会社が将来、その恩恵を活用できるようにするはずだ。


HBR.org原文:Why the Crisis Is Putting Companies at Risk of Losing Female Talent, May 05, 2020.


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