(3)eコマースの伸張に伴う物流の効率化
コロナ危機による消費行動の変化がeコマースの浸透率を高めたことに異論はないだろう。リアル店舗に足を運べない中、eコマースの利便性を知った消費者が、かつての日常に戻るとは考えにくく、浸透率の上昇が不可逆的であることは広く議論されている。
本稿は文字数に限りがあるため、その広範なサプライチェーンへの影響についての詳述は避けたい。一例として生鮮品の物流の効率化が進むことを挙げたい。
これまで、eコマース事業者や一部の小売り事業者は、生鮮品の戸別配送に取り組んできたものの、配送効率の低さから採算割れが起きていた。拠点から顧客に届ける「ラスト・ワンマイル配送」の効率を高めることに、事業者は腐心してきた。
今回のコロナ危機で起きたのは、都市部を中心とした需要の高密度化だ。このため、一定条件の下では黒字化する事例が見られた。eコマースの伸張により、物流の効率化が図られているともいえる。
(4)環境・サステナビリティ意識の高まり
近年、欧州を中心として「飛び恥」(Flygskam)運動に象徴されるような、社会的な環境意識の高まりが生まれている。今回のコロナ危機で世界各地の人の活動が抑制されたことにより、温室効果ガスの減少などにより、自然環境へのポジティブな変化が見られたという報道があった。
また、出張を取り止め、ビデオ会議を活用した結果、むしろ生産性が高まったという声も聞く。ビジネスパーソン個人としてのこのような体験がさらに社会の環境意識を高めていくことにつながるだろう。
環境意識の高まりは、国内や域内への回帰に、別の意義を与えることにもなる。例えば、企業のカーボンフットプリント(サプライチェーンに関わる温室効果ガスの総量を二酸化炭素排出量に換算して表したもの)を減少させることにつながるためだ。今後、環境負荷の低いサプライチェーンの実現がより一層求められるようになるだろう。