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新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、世界中の企業が存続すら危ぶまれる危機に直面している。経営が苦しくなると、多くの企業が新規採用を停止したり、大幅に縮小したりしがちだ。だが、危機後の成長を見据えるならば、人材への投資を控えるべきではない。むしろ優秀な人材を獲得できるチャンスであり、史上最大の危機を迎えたいま、前例のない好機が訪れたと言える。


 新型コロナウイルス感染症(COVIUD-19)のパンデミックが企業や産業、国家経済、そして私たちの社会にこれまでは考えられなかったような形で襲いかかり、社会をつくり変えているいま、ビジネスリーダーは生き延びることだけでなく、その先を考えなければならない。

 この危機は自分の組織のためだけでなく、もっと大きな利益をもたらす機会を生み出す可能性がある。その中で特に重要なのは、仕事を見つけたり、維持したりすることに苦労しているかもしれない、有能な人材を獲得する機会だ。

『エコノミスト』誌によると、有能な人材の不足を懸念するCEOは、2012年の50%から80%に増えている。一方で、経営トップの外部登用は記録的に増えており、グローバルな大手人材斡旋会社のビジネスは昨年9~15%拡大している。

 現在、多くの企業がレイオフ(一時解雇)と経営合理化を進めている。崩壊しかけている業界もある。新卒もベテランも、世界中で前例のないほど多くの人が、就職先を探すことになるだろう。

 さらに、熾烈な人材争奪戦を煽り続けてきたグローバリゼーションが後退するかもしれない。企業は国際展開の戦略や国境を超えたビジネス慣行を見直し、働く人々は、個人の目的や、自分や家族の優先順位を再考して、地理的な希望や仕事の好み、移動の習慣を真剣に考え直している。

 企業がアクセスできる人材プールが突然、変化して、拡張しているのだ。先見の明のあるリーダーはそれを最大限に利用して、危機後の回復と成長に備えることができる。経営論の第一人者ジム・コリンズが言う通り、「グッド」から「グレート」への飛躍は、適切な人材をバスに乗せるところから始まる。