機会をつかむ

 先見の明のあるリーダーは、採用をめぐる100年に一度のこの機会に、どのようなイニシアチブをとるべきか。緊急性が高く、かつ規律のある取り組みがいくつか考えられる。

 ●組織の主要なリーダーに、過去5年間に雇いたかったと思う優秀なプレイヤーを3~5人挙げてもらい、彼らの現状を確認する

 名前が挙がる人たちは、おそらく(サプライヤーや顧問、クライアントとして)頻繁にやり取りしているか、過去に採用候補者として評価したことがある人だろう。

 次回の幹部会議で、その一人ひとりについて話し合い、会社にとって魅力的な人材かどうかの評価をして、実際に連絡を取る人を確認する。状況が変わり続けているいま、多くの人がオファーを前向きに検討するだろう。

 私がエゴンゼンダーで経験した最高の採用の一つは、中南米で私が知り合って以来、10年以上そのキャリアを注意深く追跡していた若い優秀なエグゼクティブだ。

 彼は当初、エグゼクティブサーチの仕事をするつもりはないと言っていた。しかし、いまから20年前、彼が大企業のCEOとしてキャリアを積んでいた重要な時期に、絶好のタイミングが訪れた。

 私はあらためて彼を誘った。以来、グローバルパートナーとして、彼の母国のオフィスのリーダーとして活躍し、あらゆるグローバルな場面で主要な役割を担っている。

 ●専任チームをつくり、ターゲットとなる部門や企業から、現在は無職か、キャリアの変化に前向きな、潜在的な候補者を発掘する

 アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾス創業者兼CEOは、同社の高い採用基準が成功の重要な要素だと、繰り返し語っている。

 私は何年も前、アマゾンの世界的な採用サミットで講演した際、ターゲットとなる部門や企業から最も有望な人材を連れてくる仕事に専念している、数百人のアマゾニアン(アマゾン社員)と会った。その一人は、本人の言葉を借りれば、全米屈指の人材の宝庫である軍事部門のリクルートを専門としていた。

 いまのような時期は特に、すべての企業がこのくらいの傾注と規律を持って、潜在的な候補者の発掘に取り組みたい。

 航空会社やホテル、レクリエーションなど大打撃を受けている分野や、すでに景気後退に直面していたかもしれないスタートアップなどから、優秀な人材を主要な部門にスカウトするために、人事部門のリーダーに体制の強化を訴え、辣腕の採用担当者を計画的に投入しよう。

 ●面接や推薦文などの確認は、リモートでも対面と同じ厳格さで行う

 現代のテクノロジーのおかげで、物理的な距離があっても、従来の採用プロセスや手順をすべて再現できるようになった。電話会議やビデオ会議は必要不可欠だ。そのうえで、採用の専門家が提言する基本的なガイドラインに従おう。

 新規採用者に求める資質や能力については、採用を始める前に説明する。現在の流動的な時期は、インスピレーションを与えられるリーダーシップ、変化のマネジメント、協調性、影響力などのソフトスキルと、成長と学びを続け、新しい状況に適応していける潜在能力を、私はかなり重視する。

 そのような潜在能力は、適切なモチベーションに加えて、好奇心、洞察力、エンゲージメント、決断力から生まれる。たとえば、「チームを率いて大きな変革を成し遂げたときのことを話してください」など、行動に基づく質問をする。

 面接が終わったらすぐに、あなたの最初の判断基準をどこまで満たすか、その考えや見解を記録する。複数の(ただし多すぎないこと)面接官の記録を比較して、推薦文も慎重に確認する。数十年におよぶ社会調査から、特にソフトスキルについては、第三者の意見のほうが個人の意見より、はるかに正確であることがわかっている。

 ●最高の候補者のモチベーションを刺激するために努力を惜しまない

 ぜひとも欲しいと思う人物を採用できそうな手ごたえを感じたら、会社への愛と情熱を共有して、新しい同僚として一緒に築きたい価値観を説明できる幹部と、候補者が話をする機会をつくる。

 報酬も重要だが、知識労働者の真のモチベーションを刺激するのは、高いレベルの自律性と達成感と目的意識だ。この困難な時代にも、柔軟な就労形態がカギを握ることは間違いない。さらに、自分たち以上に大きなものを築くために働きながら、学習と成長を続ける機会があることも重要になる。

 ●社内の人材の登用、維持、育成をおろそかにしない

 いまのような時期は、社内の重要なプレイヤーにあらためて注目する時期でもある。

 これまで以上に彼らに寄り添い、業界や会社の見通しの修正を踏まえて、彼らのスキルや知識を評価し、潜在能力を開花させるための手助けをする。危機に発生しやすい業務の拡大解釈の適切な運用を含めて、目標を絞ったキャリア開発プランを提供したい。

 アルゼンチンは、2001年の経済危機でGDPが年率30%落ち込み、通貨を300%切り下げた。私は当時、アルゼンチンで事業を行っていた米国の銀行から連絡を受けた。その銀行は数週間で20世紀の累積利益よりも多くの資金を失いながら、現地の経営幹部は、人材をつなぎとめる対策を私に依頼したのだ。

 銀行の現状を考えれば、競合相手が優秀な人材を引き抜くだろうと思われた。しかし、彼らこそ、巨額の損失を回復するために必要な人材だったのだ。

 今回のパンデミックは、世界中に前例のないトラウマをもたらしている。経済的な後遺症は、多くの人にとって同じくらい痛手となるだろう。

 このようなときは、短期的な危機管理に集中しがちだ。しかし、次々と拡大する悲劇から抜け出すことができたときに、生き残るだけでなく繁栄できるのは、長期的な思考ができる人たちである。

 あなたの企業に十分な資本があり、永続的な「グレート」を目指して採用を続ける先見性があるなら、いまがそのときだ。


HBR.org原文:Now Is an Unprecedented Opportunity to Hire Great Talent, May 01, 2020.


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