企業が事業活動を再開する中、従業員と顧客の安全を確保するためには、どのような措置を取ればよいのか。そうした措置の多くは、「手を洗う」「マスクをつける」といったシンプルなものだが、それが「規範」になることが重要だ。
それまでの規範をどれくらいのスピードで変えられるかは、違反を正すことが当たり前に感じられるようになる速度と一致する。ルール違反が放置されれば、健全な行動など冗談にすぎない。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが続く中、従業員と顧客の安全と健康を確保するうえで肝心なのは、マスクを着用したり、体温をチェックしたり、手を洗ったり、他人と2メートル距離を置くといった行動規範を定めることだけではない。私たち全員が、それを毎回必ず実行することにかかっている。
そのためには、うっかりルール違反を犯した人に声をかけて、ルールの遵守を促すことが絶対的に不可欠だ。だが、人間は基本的に、こうした声かけがとても苦手である。
筆者が経営するコンサルティング会社バイタルスマーツが最近、1062人に話を聞いたところ、4人中3人が対面でやり取りする際の感染リスクが心配だと答えた。それでも、10人中7人が自分と他人の安全を確保するために必要なこと、すなわちルール違反者に注意を促すことはそれほどやらないと認めた。
筆者のチームは過去30年間、根本的で持続可能な行動の変化を迅速に起こすためには何が必要かを研究してきた。そこからわかったことの一つは、人間の行動に強力な影響を与えるためには、以下に挙げる6つの影響の源泉をカバーするような計画を策定する必要があるということだ。
(1)強力な道徳観念
(2)意識的な実践
(3)同僚とリーダーからのプレッシャー
(4)社会からのサポート
(5)点数化
(6)環境中のヒント、ツール、リソース
筆者のチームの研究によると、6つの影響の源泉すべてが強力に存在すると、ポジティブな変化が起きる可能性が10倍も高まる。
この6つの源泉すべてを強化するベストプラクティスを5つ挙げよう。これら5つすべてを組み合わせて実践しなければ、有意義な変化が起こる可能性は大幅に低下する。