地方創生の鍵を握る「共創」と「競争」
── 書籍では、「7つの提言」を核に、地方創生を実現するために必要なアクションが方程式としてまとめられています。
この7つの提言は、①地域独自の価値を見いだすこと、②現状を見直してコストを削減すること、その上で③住民や観光客、企業を誘致するための実行戦略を打ち出すこと、という3つの観点から必要なアクションを導き出したものです(図)。方程式そのものは、地方創生に限らずあらゆるビジネスに共通する考え方ですが、こと地方創生においては、「共創」が非常に重要な鍵になります。

地域の優位性を明らかにし、それを中心に戦略を構築していくことがセオリーですが、全ての自治体が単独で勝負できる強い優位性を持っているわけではありません。そこで、複数の地域で連携・協調して共創価値を生み出すことが重要です。都市間競争は国際化しており、もはや隣近所の自治体をライバル視している場合ではありません。
コスト削減においても同様です。人口減少社会では、自治体単位で高度な都市機能をフル装備するのは難しい。医療サービス、公共交通の拠点、産業クラスター、教育機関などを広域で再設計し、サービスの質を維持したまま、いかに集約するかを考える必要があります。そもそもデジタル化が進むと、行政区分の意味は希薄化します。住民にとっては、生活の中でさまざまな都市機能をスムーズに利用できるかどうかが重要であり、同じ自治体内で完結しているかどうかにあまり関心はありません。都市OSのような、日本全国の自治体が使える共通の基盤を広げることの意味もそこにあります。
実行戦略においても、例えば、都市プロモーション活動において目的を同じくする自治体同士が連携すれば相乗効果が見込めます。長野のブドウと山梨のブドウが競合して価格競争をするよりも、「高品質な日本の果物」としてブランディングし、海外の消費地に売り込んだ方が高い成果が見込めるのです。