第1ステージ:
緊急性の低い業務の再開と検査・接触者追跡

 ほとんどの医療機関は、すでに業務の再開に向けて進んでいる。本稿では、変革とイノベーションがきわめて重要になる第2ステージ~第4ステージに焦点を当てよう。それぞれのステージごとに、ガイシンガーの作業グループが取り組んだテーマのいくつかを紹介する。

 一連の危機の間、私たちの最大の関心事は、患者とスタッフの安全だった。この点は、緊急性の低い診療活動を再開したあとも変わらないだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐうえで重要な役割を果たすのは、検査だ。ガイシンガーは、米国の医療機関としてはかなり早い時期に、患者とスタッフの両方を対象とする検査を院内で検証・実施し始めた。

 2020年6月初頭までに、院内で実施した検査は2万1343件。そのうち2455件が陽性だった。この検査件数と陽性件数が地元ペンシルバニア州全体の数字に占める割合は、それぞれ3%と4%に達する。州内で人口が多い地域を診療活動の対象としていないにもかかわらず、これだけの数の検査を実施できた。

 感染症を封じ込めるうえでは、接触者追跡も不可欠だ。それはこれまで州と自治体の保健当局の役割だったが、新型コロナウイルスの感染拡大という国家的危機の中で、保健当局が対応し切れなくなっている。実施能力を持っている医療機関は、官民協力の一環として接触者追跡の役割も担うべきだと、私たちは考えている。

 米国で必要と考えられている接触者追跡要員は、推計で30万人。実際の人数はそれに遠く及ばない。

 多くの医療機関は、新型コロナウイルスの検査を行い、検査結果を通知し、陽性者を治療することに関しては経験を積んできた。これらの業務に加えて接触者追跡の役割を担うことは、自然な流れに思える。これを行うことにより、医療機関は社会に大きな貢献ができるし、自院で受け入れる新型コロナウイルス感染症患者も抑えることができる。

 ガイシンガーでは現在、24人の職員が接触者追跡の業務にほぼ専念している。こうして、組織として新しい能力を持つようになったことの恩恵は、目先のものだけではない。感染拡大の第2波が訪れたときにも、大きな価値を生むことが期待できる。

 ガイシンガーの接触者追跡チームはこれまでに、1600人の陽性者およびその人たちの接触者と連絡を取るために、2700件の電話をかけた。接触者追跡は、患者と医療従事者と地域コミュニティのすべてに直接的な恩恵をもたらす。