第3ステージ:
危機後の活動の開始と第2波への対応
コロナ禍に対応するために医療機関が急遽行った変更のいくつかは、この先も元に戻らない可能性が高い。たとえば、多くの医療機関は、スタッフのかなりの割合に在宅勤務を認めた。ガイシンガーも、ただちに7000人のスタッフを在宅勤務可能にした。
在宅勤務を本格的に導入することによる恩恵としては、スタッフの安全が高まること、そして、医療機関にとって採用可能な人材の候補が大幅に増えることなどが挙げられる。出勤せずに働けるなら、世界のどこにいる人でも採用できるからだ。
今後もスタッフが在宅勤務で十分に業務を行えれば、コストの節約も期待できる。オフィスの賃貸契約を解約したり、所有している不動産を売却したり、オフィススペースを診療スペースに転換したりできる可能性が出てくるのだ。
最近の分析によれば、ガイシンガーのスタッフの最大30%は恒久的に在宅勤務に転換できる。さらに30%のスタッフは、オフィス勤務と在宅勤務を併用するハイブリッド型への転換が可能だ。しかも前述の通り、診療のかなりの割合が引き続き遠隔診療の形で行われると思われる。
こうした点を考慮して、私たちは今後の施設計画の見直しに着手している。コロナ禍で在宅勤務がうまくいった医療機関は、スタッフのうちどれくらいが恒久的に在宅勤務可能かを検討してみるべきだ。在宅勤務への移行が大幅に進めば、事業運営のコストが大幅に減り、オフィススペースを診療スペースに転換できるというメリットが期待できるのだから。
コロナ禍は、監視を強化する必要性も浮き彫りにした。
たとえば、この秋、もしくは冬には、感染の第2波が訪れると予測する専門家が多い。現時点では患者も医療従事者も感染予防のために強い警戒心を抱いているが、感染者数が減り、社会・経済活動が再開されれば、再び新規感染者が増え始めたときに、しばらくは気づかれないままになる可能性がある。
そこで、第2波の襲来を早期に察知できる確率を高めるために、新しい早期警戒監視システムを確立しなくてはならない。既存のアプローチでは、第1波を察知できなかったからだ。
第2波を素早く察知するために、ガイシンガーはスタンソン・ヘルスと協力して、人工知能(AI)を活用したソリューションの開発と導入を進めている。
具体的には、救急車や救命救急センター、その他の医療機関で作成される文書をリアルタイムで分析し、新型コロナウイルス感染を漠然と疑わせる言葉(たとえば「味がしない」「息が苦しい」など)を洗い出そうというのだ。通常の診療活動が再開されて臨床現場に慌ただしい日々が戻ってくれば、こうした情報は目にとまりにくい可能性がある。