私たちはジャージーシティー・メディカルセンターで、重篤な新型コロナウイルス患者の家族らと対話を行う「ケアの目標対話チーム」を試験的に発足させ、最終的には患者が多く運ばれた別の4ヵ所の系列病院でもチームをつくった。

 各病院のチームに所属するのは、リモートで勤務する6~10人の医師だ。チームは午前8時から午後6時まで働き、各メンバーは1度の電話に2~3時間かける。

 支援のニーズが高くなった場合に備え、バックアップの体勢も敷いた。各病院の救急センターは毎週、救急部門と現場にこのチームのスケジュールや待機するメンバーの電話番号を共有した。

 チームのメンバーは、精神科医、老年病専門医、プライマリケア専門医を中心に、プライマリ緩和ケア医療を提供する医師らで構成された。関心を持ったという1人の外科医も参加した。

 こうした医師らを見つけるのは難しくなかった。私たちは系列の医療グループやプライマリケア・システムの医師らに連絡を取った。外来患者の数はかなり減少していたため、彼らには時間な余裕があり、手伝いたい、「何か」をしたいと思っていたのだ。

 メンバーは、対話のスクリプトを使ってトレーニングをした。スクリプトの参考にしたのはバイタルトークの"COVID Ready Communication Playbook"や緩和ケア推進センターの"COVID-19 Response Resources"など、オンライン上の素晴らしいコミュニケーションのリソースだ。ほかにも、スクリプトなしでの対応が必要とされる感情的な反応への対処法などのトレーニングも行われた。

 公衆衛生上の緊急事態の中で患者の希望を把握する必要に迫られていることは、日常の質の高い医療に欠かせないものとして、患者の目標を知ることの重要性を浮き彫りにしている。電話サービスによって私たちは、多忙を極める現場の医師よりも多くの時間をかけて、ケアの目標について家族と話し合うことができた。

 新型コロナウイルスの患者数が減少し始め、このサービスは停止したが、この経験から重要な教訓を得た。すべての患者のケアの目標を確実に把握するために、さらなる努力が必要ということだ。そのために私たちはいま、プライマリケアにおけるベストプラクティスとして、ケアの目標の対話法を確立することを目指している。


HBR.org原文:Delivering Grim News to Covid-19 Patients' Families, June 24, 2020.


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