●自分にとって理に適うことを重視する

 もう一人、私が感銘を受けたのが、最新著『イヤなやつほど仕事がデキる』の執筆中に会ったチェズレイ・サレンバーガーだ。

「サリー」の愛称で知られる彼は、2009年1月、全エンジンが停止した旅客機をハドソン川に無事に着水させた機長だ。サリーは、最も妥当な選択肢(最寄りの空港に着陸)に囚われることなく、よりクリエイティブで有望な解決策を考え出した。

 プレッシャーにさらされているときは特に、一見最善と思われる行動を選びがちだ。しかし、幅広い選択肢と視点をじっくり考えるほうがよい。

 たとえば、健康と幸福のためには、質の高い睡眠を取るべきだとよく言われる。しかし私は、一度も目覚めずに数時間以上眠ったのも、朝6時を過ぎても眠り続けたのも、最後はいつだったか覚えていない。

 悪い夢を見たり、上の子ども3人の誰かをトイレに連れて行ったり、4歳の娘が午前3時にベッドが見つからないと訴えてきたり。でも、それでいいのだ。いまは、睡眠に関するアドバイスは笑って聞いている。明らかに、いまの私にはできないことだから。

 同僚の中には、いまが最も生産的だという人もいる。いまが最も体調が良くて、休息も取れていると話す友人もいる。

 ロックダウン中に私はそうした経験をしていないが、それでかまわない。私は彼らの成果に微笑み、最近の自分の運動といえば、子どもたちの後を追って家の中を走り回ることなのを笑う。これは、私の最後のルールにつながっている。

 ●笑う時間をつくる

 大笑いすることは、誰にとっても楽しい。でも、特に恐ろしいニュースを聞かされているとき、笑うための時間をつくっている人はいるだろうか? 面白いジョークを聞いたり、ユーモアのある人と話したり、コメディを見たりするのは楽しいが、そのための時間をスケジュールに確保しているだろうか? 

 楽しむことには多くのメリットがあるため、危機のときには特にそれをやるべきだ。

 2015年の研究によると、笑うという行為は、初対面の人に対してよりオープンになり、人間関係を築くのに役立つ。また、イエール大学の心理学者エリカ J. ブースビーが主導した研究では、笑うことが、課題に直面した際の感情のコントロールにつながることもわかった。

 笑いは私たちの健康を向上させ、学ぶことの助けにもなる。そして何よりも、笑いは伝染する

 昨今のニュースは悲観的なものばかりだが、笑えることを見つけるのが困難であってはならない。今朝、3歳の娘に「出かける前に下着を履いて」と何度も言ったあと、4歳の娘がキャンバスの代わりに自分自身に絵を描いているのを見つけたとき、私は腹を立てるよりもむしろ笑ってしまった。

 数週間のロックダウン生活を経て、夫と私は互いにすぐにカッとなって、言う必要のないことをきつく批判してしまうことがあると気がついた。

 私たちの解決策は、どちらかが相手を批判したくなったら(「食器をシンクに置きっぱなしにしないで、食洗機に入れることができたでしょう」など)、ふざけたダンスをしながら批判するというものだ。ストレスフルな瞬間を愉快な瞬間に変えるのだ。

 私たちには、どうにもできないことがたくさんある。しかし、毎日をどう過ごすか、自分自身に対してどこまで期待するかを、自分で選ぶことができる。いまはこの4つのルールに従って、もう少し安らぎを見つけるときだ。


HBR.org原文:Lessons from a Working Mom on "Doing It All", June 25, 2020.


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