●積極的に促す

 人やチームによっては、期待する行動をみずから手本となって示すだけでなく、もっと直接的に促すことが必要かもしれない。

 私は昨年、「バランス」を会社の中核的価値観に加えた。それをチームに発表するに当たり、仕事以外の人生を持ってほしいということを強調した。

 チーム全員に仕事以外の生活について、互いに安心して話せるようになってほしい。仕事は人生のすべてではなく、人生の一部であるべきだという私の信念を込めたのである。

 何より大切なのは、バランス重視を口先だけのことにせず、会社の具体的な方針で裏づけることだ。無制限の有給休暇、サマー・フライデー(夏期は金曜の勤務時間を短縮する)、十分な育児休暇、学習や活動、自宅の仕事場の設備の改善費用に充てる月々の「バランス手当」などが考えられる。

 あなたの会社の創業以来の中核的価値観を変える必要はない。だが、オープンであることを重視していると従業員にわかってもらうには、いままで以上に積極的な努力が必要なことがある。

 たとえば、4半期ごとにチームのリトリートを開催し、従業員が仕事以外の生活や関心について話せる場をつくるといった大掛かりなものも考えられるし、毎週のミーティングの10分間を、チームのメンバーが自分にとって大切な主義主張について話すのに充てるといった簡単なものでもいい。

 誰もが遠慮なく自分自身でいられる文化を創造すれば、緊張は和らぎ、理解は深まる。週1回、早退する同僚にいら立っていたが、実はその同僚の子どもに精神的な問題があり、毎週セラピーに通わなくてはならないことがわかるかもしれない。よそよそしく短気に見えた同僚が、実は家族を亡くした悲しみに耐えているのだと気づくかもしれない。

 何が人を動かすのか、何がやる気を引き出すのかがわかったら、ブレーンストーミングで自由に率直に語り合えるようにするのに役立つかもしれない。

 チームのメンバーが安心して、自分のアイデンティティのすべてを仕事に持ち込むことができれば、シナジーと信頼、生産性は大きく向上するだろう。しかしもっとも大切なのは、チームに共感が生まれ、絆が深まることだ。

 そして、自分のある部分を隠すことにエネルギーを取られなくなれば、頭と心に余裕ができて、あなたにとって、そして会社にとって、重要なことに集中できるようになるだろう。


HBR.org原文:Parents, Bring Your Whole Self to Work, July 09, 2020.


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