●ペースに気を配り、急がない
ビデオ会議では、参加者の目の動きを追おう。私たちの会議では、ロバータがメモを取るために視線を落としたら、サビーナは話を止める。ロバータの視線が外れたら、情報の流れを止め、次回の会議のためにメモを取る時間を確保する。
相手の目の動きをよく見て、いつどこで注意力が分散するかわかってくると、会議のペースを管理しやすくなる。視覚的情報は聴覚体験を補うため、相手の理解度を測り、気が散りそうなものに対処するのに役立つ。
ペースを緩めると、会議の参加者全員に言語情報を処理する時間ができ、メッセージをしっかり理解してから、次の発言者やテーマに移ることができる。参加人数が少なく時間の短い会議ほど、ペースは管理しやすい。
●競争ではなく、協力を育む
ビデオ会議の音声は、複数の人が同時に話そうとすると途切れる。
サビーナが初めて聾者のグループと対面で会ったとき、彼らはロバータの家のテラスに座っていた。突然、その中の一人が足を踏み鳴らし始めた。最初は驚いたが、すぐに注意を引くためのサインだとわかった。
バーチャルな世界でも、参加者が発言したいときのために似たような工夫ができるだろう。進行役を指定し、発言したいときには挙手すると決めておくのは、一つの手だ。画面上で手を挙げてもいいし、ビデオ会議アプリの機能を使ってもいい。
進行役が、一定時間ごとに話す順番を決めるという方法もある。手順を決めて、1度に1つの会話だけになるようコントロールすれば、より多くの人が参加できるだけでなく、誰もがもっと会議に集中し、公平に関与できる。
●注意を引くために映る範囲を広げる
サビーナの目標は、ロバータと会議をするたびに新しい手話を習得することだ。たとえば、ロバータが「イエス」のような簡単な言葉の手話をすると、サビーナはそれを真似る。だが、サビーナが「どういたしまして」という手話を真似たとき、ロバータから、サビーナの画面設定は健聴者向きで、手話の下のほう、つまり胸より下の部分が見えないと指摘された。
ボディランゲージが、メッセージの伝達に占める割合は大きい。映像で首から上しか映らなければ、その多くが失われてしまう。対面で会う場合に、胴体のほとんどが会議室のテーブルの下に隠れていたらどうなるか想像してみてほしい。ポーカーでは効果的な戦略かもしれないが、会議では逆だ。
カメラの角度やノートPCの傾き具合、椅子の位置を調整して、頭の上からへそのあたりまで映るようにしよう。ボディランゲージが見えれば、メッセージを理解しやすくなる。手が画面内に入っていると、会議のテンポがよくなる。デバイスをいじったりできず、その場に集中せざるをえなくなるからだ。