●「非言語の言語」を利用してエンゲージメントを高める
聾者にとって、一日中、口頭言語の会話と手話の会話を行ったり来たりするのは、とても疲れることだ。同じように、立て続けのビデオ会議には忍耐力がいることに、多くの人が気づき始めている。
会話を意識的に管理すると、誰にとっても参加しやすくなり、エンゲージメントは最大化し、疲れは最小限ですむ。ビデオ会議では、サインを戦略的に使おう。参加者が多いほど、視覚的サインを取り決めておくとうまくいく。
前述したようにが、発言する前には挙手しよう。サビーナが進行役を務めるオフサイトミーティングでは、親指を1本立てると「イエス」、2本立てると「賛成」や「プラス1票」や「あなたのアイディアは素晴らしい」を意味することになっている。誰かがアイデアを発表して、PCの画面が親指2本で埋め尽くされたとき、バーチャル会議に笑顔が広がる。
言葉をサインで彩ることでメッセージは豊かになり、理解が深まり、時間が節約され、エネルギーが高まる。こうしたサインは、気力を奪うのではなく、緊張をほぐし、私たちの助けとなる。
●チャットを使って明確に伝える
聾者や難聴者に限らず、たいていの人は会話で何かを聞き逃しても気づかなかったり、それを認めなかったりする。会議中にそれに気づいたときは、チャットが情報を補うツールになる。
追加情報があるときや、複雑なスペル、略語、非日常的な用語を使うときは、チャット画面を併用するとよい。誰にとっても理解の助けになるし、不必要な誤解や繰り返しを防ぐことができる。
●会話を成功させる服装を選ぶ
手話通訳者は模様のある服を避け、自分の肌の色とコントラストをなす色の服を着る。聴覚障害者に手話がくっきりと見えるようにするためだ。
同じように、映像では入り組んだ模様は目障りになり、手の動きをわかりづらくする。目に優しく、サインがはっきりと見える服を意識して選び、背景にも気を配ると、プロフェッショナルとしての存在感が出て、気持ちも高まる。
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ニューノーマル(新たな常態)の予測できない経路を、不慣れな方法によって進もうとするとき、本稿で紹介した方法をすでに十分に試行を重ねてきた試した人々、すなわち聾者と難聴者から学べることは多い。
視覚的な合図を組み込み、会議のペースをコントロールすることで、コミュニケーションは協働的なプロセスになり、同僚に共感のサインを送ることもできる。効果的なコミュニケーションを図る責任を分かち合えば、タスクは分割され、成果は何倍にもなるだろう。
HBR.org原文:What Deaf People Can Teach Others About Virtual Communication, August 03, 2020.
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