財政政策と競争力

 アメリカ合衆国は財政破綻への道を進みつつある。専門家は、連邦政府の歳入は歳出を大幅に下回り、そのうえ、それが際限なく続くと予測している。アメリカ国内の企業リーダーらは経験上、「この状況は危険である」という漠然とした意識を持ってはいる。しかし、財政政策がアメリカ経済や各自が経営する企業の競争力に対して具体的にどのような影響を与えているかという点については理解していない。

 現在の財政政策は、いくつかの面で競争力を損なっており、方向転換しない限り、アメリカの事業環境は悪化していくだろう。財政政策と競争力との関連について理解が深まれば、方向転換が実現する可能性も高まるかもしれない。

 では、財政政策は競争力にどのような影響を与えるのか。これに答えるためには「競争力」を明確に定義する必要がある。競争力とは、国民の生活水準をよりいっそう向上させ、その国の企業がグローバル市場でどの程度の成功を収めることができるかを競う力である。企業の競争力の基準は、所定の生産量に要する生産コストである。労働者の生活水準を維持、向上させつつ生産コストを引き下げる唯一の道は、生産性を引き上げること、つまり労働者1人当たりの生産量を引き上げることである。