自分を見る「レンズ」

 初めて自分がリーダーだと感じたのはいつかと聞かれたら、あなたはどう答えるだろう。幼少期か、それとも組織の中で最初に大きな役職に就いたときか。人からリーダーだと言われたとき、あるいは指示を求められたときだろうか。

 筆者らが調査した92のオリジンストーリーは、次の4つの主なテーマのうちの1つに当てはまった。「本質」「関与」「遂行」「受容」だ。

 これらのテーマはレンズのような役割を果たし、筆者らがインタビューしたリーダーたちが、今日の自分をどう見ているかを決定づけている。それぞれのテーマに目を通し、どのテーマが最も身近に感じられるか、そしてこのナラティブ(物語)が今日のあなたのリーダーシップをどのように形づくったのかを考えてみよう。

 ●本質

 このレンズを使ったリーダーは、「常に自分をリーダーだと認識していた」ことを示唆している。たとえば、フアンはこう話した。「私は子どもの頃からリーダーでした。チームを率いたり、人を率いたりすることに常に喜びを感じていました」

 このタイプのリーダーは、近所の子どもたちをまとめたり、起業家的な活動に参加したり、スポーツチームのキャプテンを務めたりと、幼少期あるいは小学校低学年の頃から自然とリーダーシップを求めていたと強調した。

 本質のレンズを使う人は「現在」のみずからのリーダーシップについて、自信や楽観主義といった個人的な資質に言及し、天性の、そしてインスピレーション的なリーダーシップのスタイルだと説明することが多かった。

 ●関与

 このレンズを使ったリーダーは、人や活動に対する高いファシリテーション力を明かした。彼らは自身のリーダーシップの原点は、緊急の必要性に対処せざるを得なかったときだと考えていた。

 たとえば、ジェニファーは自分の原点を行動と結びつけた。「生まれながらのリーダーになろうとしたのが始まりではありません」と彼女は述べた。「しかし、ビジョンをつくること、何をすべきかを考えること、何かを改善することが好きなのです」

 このレンズのリーダーたちは、新しい組織を立ち上げる、異種のグループ間でビジョンを共有するのを助ける、課題や危機的状況に自発的に取り組む、対立する2つのグループ間の橋渡しをするなど、満足できない慣習を変える役割をみずから買って出ていた。

 関与のリーダーたちは現在、ファシリテーター的なリーダーシップのスタイルを志向しており、他者を巻き込むことや集団行動を重視している。