レンズがリーダーシップを発揮させ、制約する

 人がリーダーに「なった」ストーリーと現在のリーダーシップとの間に強い相互関係があることが、筆者らの研究で明らかになった。すなわち、頑なに1つのレンズだけを使っていると、時間をかけて異なるスタイルを試す能力が制限されるかもしれない。

 たとえば、他の人が自分に従っているときだけ自分がリーダーだと認識する(受容)なら、自身のアイデンティティが他人の認識と強く結びついている可能性があり、他人から「求められる」場合を除き、新しいリーダーとしての役割を獲得するのを妨げるおそれがある。

 1つのレンズに固執することは、あなたがロールモデルとして求める人やリーダーの役割を任せる人を制限し、リーダーと捉える人を限定することにもなりかねない。たとえば、あなたが「常にリーダーであり続けてきた」(本質)場合、他の誰か、特に異なるスタイルの人に、チームのリーダーを担わせることは難しいかもしれない。

 あなたにとっての意味は何か

 あなたのリーダーシップについて、過去のさまざまな経験や記憶を元に、さまざまなオリジンストーリーを描いてみよう。逆境の中で人が行動を起こす手助けをしたときのことや、人から支援や助言、指導を求められたときのことを考えてみる。

 もしあなたが「生まれながらの」リーダーだったらどうか。それはあなたのリーダーシップに対してどんな意味があるのか。さまざまなタイプのリーダーシップのストーリーを構築し、それを伝えよう。自分のアイデンティティを強化し、適応力を高めることができるはずだ。

 これを実践することは、あなたが管理や指導をしている人たちとっても重要だ。どのようにしてリーダーに「なった」のかを話してもらい、あなたのストーリーも話そう。リーダーシップとは何かについての共通理解が深まり、彼らがさまざまな行動を試すきっかけになるかもしれない。