性別による違い

 回答者がどのレンズを使っているかについて、業界、年齢、年功序列における地位、職務による違いは見られなかったが、性別による違いが確認された。「本質」(自分は「常に」リーダーだった)と「受容」(「人」がリーダーと見るなら自分はリーダーだ)のレンズは男女でほぼ同数だった。

 しかし、リーダーらしい行動を自分が積極的に「している」ときにリーダーであると感じた(「関与」のレンズ)のは女性の方が多かった。一方、特定の役割を獲得したときや、チームの面倒をみたり、課せられた義務や責任を果たしたりしたときにリーダーだと感じたという「遂行」のレンズを使ったのは男性が多かった。

 女性が「関与」のレンズを選ぶことは、女性が職場でより重要度の低い仕事を任されやすく(そして引き受けやすい)、また危機的な状況に陥ったときに行動を起こす傾向があることが研究で示される理由を説明する助けになるかもしれない。

 関与のレンズは、男性よりも役職を得ることが困難な中で、状況を改善するために積極的な役割を果たすことを可能にする。このレンズはまた、「行動すること」によってリーダーであるという感覚を維持するため、女性に仕事を引き受け続ける重責を課す可能性もある。

 このような性別による違いはわずかなものだが、女性と男性の両方がリーダーシップをどのように概念化し、引き受けるかについて、重要な影響を与える可能性がある。性別による傾向を認識することは、新しいレンズを「試す」ことや、昇進を妨げる潜在的な盲点を発見するのにも役立つ。

 あなたにとっての意味は何か

 男性と女性では、自分のリーダーシップを振り返るときに、異なるレンズを使う傾向があることを心に留めておこう。

 人がみずからのアイデンティティを確立できるように、さまざまなナラティブを試し、満足できるものを選べるようにすること。これは重要なステップだ。また、1つのナラティブに固執することでリーダーシップを制約する可能性があることを人々が認識し、複数のナラティブにより、みずからのストーリーを豊かにする力にすることもできる。

 リーダーになるまでの自身の道のりをどう記憶し、語るのかは重要だ。それは、リーダーとしてのあなたのスタイルを形成したり、知らず知らずのうちにリーダーのあるべき姿について特定の考えに縛りつけたりもする。

 自分のストーリーを知り、さまざまな伝え方を試すことで、より適応力の高い、最終的にはよりよいリーダーになることができる。


HBR.org原文:What's Your Leadership Origin Story? August 10, 2020.


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