ステップ3:自分の「ナラティブ・アイデンティティ」を書き換える

 アイデンティティは、パーソナリティよりもはるかに強力である。アイデンティティが行動を決め、それが時間の経過とともにパーソナリティになる。一貫した態度や行動の積み重ねによって形成されるパーソナリティは、言ってみればアイデンティティの副産物だ。

「ナラティブ・アイデンティティ(narrative identity)」とは、過去と現在と未来の自分についてみずからが語る物語である。

 アイデンティティが過去と現在だけに基づいている場合、マインドセットが固定されるため、パーソナリティは永遠に固定されたものだと思い込む。しかし、現在の自分にこだわるのではなく、未来の自分の姿を想像することに集中すれば、自分のナラティブ・アイデンティティを書き換えることが可能になる。

 これは、ただ心の中で考えるものではない。自分はどのような人になりたいかを周囲の人に伝えることが重要だ。

「振りをしているうちに、実現できる」ということとも違う。むしろ、未来の自分は現在の自分とは違うのだと、正直かつ謙虚に認める。未来の自分にまだ至ってはいないが、その目標に向かって進むのだ。

 もちろん、実行するには勇気が必要だ。ただ「私はこういう人なのです」と言っているだけでよければ、ずっと楽だろう。公に「私はこういう人になりたい」と宣言することには、リスクが伴う。そこに、成功する保証はない。しかし、自分がどのような人になりたいかを意識するための、唯一の方法でもある。

 自分がどのような人になりたいかを他者に打ち明けることは、信じられないほど強い力を発揮する。みずからの新たな物語に合致するように、行動せざるをえなくなるからだ。

 ナラティブ・アイデンティティが過去の自分に基づいている場合、過去があなたの行動を決めることになる。しかし、未来の自分がどのようなになるかを意識的に決めた場合、そしてそのビジョンを他人と共有する勇気を出した場合、望む通りの未来の自分に向かって積極的に変わることが可能になる。