研究の概要
この研究では、調査対象者に対して、仕事について全般的な印象を尋ねるのではなく、スケジュール帳を開き、前の週の典型的な1日を振り返るよう促した。具体的には、その日に行った6~10の活動を挙げるよう求めた。会議、電話、メールへの返答などである。
そのうえで、それぞれの活動の内容、所要時間、その活動に関わったほかの人物について、簡単に説明してもらった。そして、どうしてその活動を行ったのか、その活動がどのくらい重要だと感じているのかも尋ねた。
2013年の研究では、45人の知識労働者による合計329件の活動に関するデータが集まった。2020年の研究(5月と6月前半に調査を実施)では、40人の264件の活動についてデータを集めることができた。
調査対象者は、いくつかの基準を満たすことを条件に無作為抽出で選んだ。その基準とは、少なくとも大学卒以上の学歴があること、フルタイムの就業経験が5年以上あること、頭脳の力と判断力によって成果が決まるタイプの職に就いていることである。調査対象者の年齢、業種、職務年数はまちまちだった。
筆者らは、調査対象者が携わっていた活動を6つのカテゴリーに分類した。事務作業(一人で行う活動)、対外的業務(社外の人とのやり取り)、下へのマネジメント(部下とのやり取り)、横へのマネジメント(同僚とのやり取り)、上へのマネジメント(上司や地位が上の人とのやり取り)、研修と能力開発である。
知識労働者はどのように
時間を費やしているのか
2013年の研究では、知識労働者たちは仕事時間の3分の2を、横へのマネジメント(多くの場合、大勢の同僚が出席する会議への出席)と事務作業に費やしていた。対外的業務(顧客とのやり取りなど)、下へのマネジメント、上へのマネジメントに割かれている時間は非常に少なく、研修と能力開発にいたってはほとんど時間が費やされていなかった。
ロックダウン期間中、この状況はどのように変わったのか。大きな変化が2つあった。1つは、横へのマネジメント(会議)の時間が12%減ったこと。もう1つは、対外的業務の時間が9%増えたことだ。
事務作業は依然として、全体の3分の1の時間を占めていた。それ以外では、上へのマネジメントの時間がわずかに減り、研修と能力開発の時間がわずかに増えたが、これらは統計上有意な違いとまでは言えない。
この2つの調査結果を比較すると、ロックダウンにより、人々は仕事の優先順位をうまく判断できるようになったと言えそうだ。
もちろん、現在もメールに返信し、レポートを書く仕事がなくなったわけではない。しかし、大人数の会議に出席する機会は大幅に減った。その結果、顧客とやり取りする時間や、研修と能力開発に費やせる時間が増えた。この点は、ほとんどの人が好ましい傾向だと考えるだろう。
一方、社内の上下関係に関わる活動(上へのマネジメントと下へのマネジメント)は、ロックダウン期間中に増加することはなかったようだ。在宅勤務では、オフィスに出社して働いていた時と違って、その場の判断で短時間の打ち合わせを行なえないことが理由なのだろう。