知識労働者は自分の活動を
どのように決めているのか
ほとんどの知識労働者は、職務内容が文書で明確に定められている。しかし、よく知られているように、さまざまな要因に基づき、いつ、どのような仕事をするかを自分で決めている。正式な担当業務に含まれていなくても、それを行うことが理にかなっていると思えば、その仕事をする場合もある。
知識労働者がこの意思決定をどのように行っているかを明らかにするために、筆者らは調査対象者たちに、日々の活動を行っている理由を4つに分類させた。標準的な業務もしくは上司の指示だから、同僚に頼まれたから、自発的に行おうと思ったから、その活動が重要だと思っていて、しかも時間があったからの4つだ。
2013年の研究では、すべての活動の52%が標準的な業務・上司の指示、18%が同僚の依頼、24%が重要な業務、3%が自発的行動だった。
それに対し、2020年の研究でも、標準的な業務・上司の指示が依然として全体の半分を占めている。しかし、同僚の依頼による活動は8%に減り、時間的ゆとりがあり、重要だという理由で行う活動は35%に増加した。
この2つの変化は、統計上有意なものである。一方、自発的行動の割合は6%に上昇したが、この変化は統計上有意なものとは言えない。
2013年と2020年の違いから、何がわかるだろうか。
ロックダウン期間中に、人々は時間の使い方を以前より主体的に決められるようになったと言えそうだ。在宅勤務への移行により、いくらか時間のゆとりが増えたのだろう。
それは同じオフィスにいるからというだけの理由で、同僚や上司にじゃまされたり、惰性から会議への出席を求められたりしなくなったからだ。それにより、最も重要だと思う活動に割ける時間が増えたのである。
それらの活動はどれくらい有効で
価値があるのか
筆者らは調査対象者に対して、それぞれの活動がどのくらい重要で、その活動を通じてどれくらい活力が湧いてくるかも尋ねた。尋ねた内容と回答は、以下の図の通りだ。
2013年と2020年の違いは、目を見張るものがある(その違いは統計上有意なものと見なせる)。
2020年の調査対象者は2013年の調査対象者に比べて、自分のやっている仕事が重要なもので、退屈でなく、簡単にほかの人に任せられるとは思っておらず、自社の目標に資するものだと感じていた。前回調査よりも重要な仕事をしているというだけでなく、本人たちがそう感じてもいるのだ。
こうした回答は、調査対象者が自己正当化を行っている面もあるだろう。人は自分のやっている仕事が重要だと思えば、自分が役に立っていると感じることができ、その仕事をほかの人に任せようとはあまり思わない。
しかし、それだけでなく優先順位の見直しも行われているように見える。重要性の低い活動を減らし、時間とエネルギーをもっと有効に費やすようになったのかもしれない。
全般的に見ると、この調査結果は、ロックダウン期間中に(主として自由が拡大したことにより)知識労働者が以前よりも強い内発的モチベーションを抱き、主体的に行動するようになったという見方を裏づけるものだ。