2020年2月までの間にも、企業はフレキシブルな勤務日や緊急事態に対応しなければならなくなった時のバックアップケア、リモートワークの選択肢といったファミリーフレンドリー(家族に優しい)な福利厚生を導入したり、終業時刻間際のミーティングを禁止するルールを設けたりしてきた。
いずれも採用活動の円滑化や従業員の定着率向上、そしてブランドカルチャーの確立が目的だったが、いまは違う。これらの取り組みの一部は、かつて失業率が低水準だった経済状況において導入が進められたが、はからずも、コロナ禍による職場ダイナミクスの急変にうまく対応する態勢を整えることとなった。
その理由を明らかにするため、筆者は多くのビジネスパーソンに話を聞いた。いくつかのケースを紹介しよう。
エマ・パティ・ハリスの場合
(『エデュケーション・ウィーク』勤務)
米国の高校以下の教育ニュースサイト『エデュケーション・ウィーク』の従業員は、昔から柔軟なスケジュルで仕事をしてきた。副編集長のエマ・パティ・ハリスもその一人だ。
まだよちよち歩きの息子がいるエマは、自宅勤務の日が多い。エマは、同社が一人ひとりのスケジュールがスムーズに運ぶように、的確なツールとテクノロジーを提供していると話し、その柔軟で手厚いサポートの企業文化を絶賛した。
おかげで彼女は、自分が大切だと思うことに集中できるワークライフバラスが確立できたと言い、会社が従業員のニーズに非常によく耳を傾けてくれたおかげで、仕事と家庭の両立ができていると感謝していた。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になると、『エデュケーション・ウィーク』は全面的にリモートワークに移行した。オンラインドキュメントのおかげで、スタッフがカレンダーを共有し、締切を把握することができたし、スラックのおかげで活発なコミュニケーションも管理できた。
それでも経営陣は、従業員の声に耳を傾けることをやめず、この危機を切り抜けるために何が必要か積極的に話を聞いた。本格的な調査の結果、スタッフが自宅のワークステーションの改善を必要としているとわかると、必要な機器や備品を購入する手当が支給された。
在宅勤務が始まると、スタッフ同士がつながり続けるための工夫もなされた。時代遅れの制約やルールが撤廃されたところ、スタッフはコロナ禍の間も予想をはるかに上回る仕事振りを発揮した。