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コロナ禍で在宅勤務への移行を余儀なくされ、多くの企業と従業員がトラブルに見舞われた。とりわけ子育て中の従業員にとっては、子どもの預け先が閉鎖されたり、ズームの会議と子どもの世話が重なったり、ワークライフバランスが崩壊しかねない状況だ。一方で、スムーズに移行できた企業にはある共通点があった。ファミリーフレンドリー(家族に優しい)な組織文化を、コロナ以前から構築してきたことだ。子育てや家族の介護、看護が必要な従業員のサポートを重視する企業は、在宅勤務に移行しても、これまで以上に強固な組織をつくることができたのはなぜか。


 新型コロナウイルス感染症がパンデミックに発展する中、共働き夫婦で3人の子どもがいるマイケル・シャファーには、心配なことがたくさんあった。

 デラウェアに住む両親のこと。クリエイティブで、好奇心が強くて、外向的だけれど、自宅でリモート学習をしなければならなった子どもたちのこと。飼い犬のことさえ心配だった。急に誰も出かけなくなり、24時間人間と一緒にいなければならなくなったのだから。

 だが、仕事のことだけは心配がなかった。家族や友人や同僚が、突然の在宅勤務に戸惑う中、PR会社エデルマンのシニアバイスプレジデント(デジタルおよびコーポレート担当)であるマイケルは、1年半前からリモートワークをやってきたからだ。

 きっかけは、妻の仕事の都合で、ワシントンD.C.からロサンゼルスに一家で引っ越した時だ。エデルマンは、従業員と家族の変わりゆくニーズをサポートすることにコミットしていた。それはマイケルのように、従業員が引っ越さなくてはならなくなっても変わらない。そのために、リモートワーク用のテクノロジーやルール、ツールも整備していた。

 そのおかげでマイケルは、ロサンゼルスで家族と一緒に暮らしつつ、愛するワシントンD.C.のチームと仕事を続けることができた。自分は運がいいと、マイケルは実感していた。

 筆者が立ち上げたイッツ・ワーキング・プロジェクトでは、仕事とケア(子育てや介護)の両立という、困難かつ常に進化し続ける課題に取り組み、企業に助言してきた。そして今回、コロナ禍で職場のダイナミクスがどのように変化しているのか、ビジネスパーソンや人事部門の担当者にインタビューを行った。

 この変化をうまく乗り切ることは、企業にとって重要だ。たしかに、米国で働く人の3分の1は必要不可欠(エッセンシャル)な職種に従事しており、コロナ禍でも勤務を続けてきた。だが、それ以外のほとんどはリモートワークにシフトしてきた。そして、その一部はおそらく永遠に在宅勤務になるだろう。

 この移行は、多くの企業と従業員にとってトラブル続きの道のりだった。子育て中の従業員にとっては、特にそうだ。

 だが、冒頭で紹介したマイケルなどに話を聞いた結果、このプロセスには明らかなパターンがあることがわかった。現在、移行がうまく進んでいる企業は、かねてから従業員とその家族を大切にする取り組みに投資をしており、そこから学んだことを今回の対応のベースにしていることだ。