ケイト・ジャッジの場合
(スポークンレイヤー勤務)
ケイト・ジャッジは、音声アシスタントのコンテンツをつくる会社スポークンレイヤー(Spoken Layer)のブランドパトナーシップ担当ディレクターで、2人の子どもがいる。コロナ禍の前は、仕事仲間との関係や仕事のために街に出ること、そして街にいることが、個人のアイデンティティや仕事の満足度の大きな源泉になっていたという。
だが、2020年に入ると、難しいことが次々と降りかかってきた。ケイト自身が肺炎にかかり、母親が人工股関節手術を受けほか、夫がエール大学のシニアエグゼクティブ向けMBAプログラムに参加するため、月に2回ニューヘイブンに通うようになったことから、家事の負担が増えた。
そこにコロナ禍がやってきて、子どもを託児所に預けられなくなった。いつもなら母親が手伝いにきてくれるが、今回は新型コロナウイルス感染症のハイリスク群に入るため、頼ることができない。
ケイトによると、スポークンレイヤーの素晴らしい強みの一つは、従業員コミュニティにある。そのため、CEOのアンディ・リプセットが早々に在宅勤務を導入し、ニューヨーク本社を廃止し、従業員の在宅勤務を快適にするための備品(作業用のデスクからインテリア、スナックまで)購入費として、高額の手当てを支給すると発表した時も、さほど驚かなかった。
ただ、それを聞いた時「とても安心した」と、ケイトは言う。「これから何が起こるか誰にもわからないけれど、アンディはつらい状況をつくらないという決意を明確に伝えてくれて、とても感謝している」
スポークンレイヤーは、スタッフ同士の連携やつながりを維持できるように、さまざまな工夫をした。たとえば、「ランチ&ラーン」(昼食をとりながら新商品の勉強会をしたり、チームビルディングをすること)を企画したり、「スターチ・マッドネス」と称して最高のジャガイモの食べ方を競うトーナメント戦を開いたりした。
ただし、参加はあくまで任意。それぞれが自分の気分や都合で決めていい。その目的は、あくまで楽しい時間を共有して、現在の状況を笑い飛ばすことだったからだ。
こうした工夫は、子育てや家族の介護など、仕事と家庭の両立をめぐる従業員のニーズに応じる努力から生まれたもので、そのおかげでコロナ禍でも有効かつスムーズに移行ができた。
ジェニ・ペリーの場合
(メディカル・チームズ・インターナショナル勤務)
ジェニー・ペリーは最近、オレゴン州ポートランドに本社を置くメディカル・チームズ・インターナショナル(Medical Teams International)に転職した。ジェニー自身は首都ワシントンD.C.に住んでいて、それまでは近隣の会社に勤めていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で、メディカル・チームズの仕事のほうが自宅で息子のリモート学習を助けながらできることから、転職を決意したのだ。
いまのところ、ポートランドとワシントンD.C.の時差は、仕事と家庭を両立するのにちょうどいい役割を果たしている。それに、上司が定期的に様子を尋ねてくれて、仕事でも家庭でも何か困ったことはないかを聞き、問題があれば、一緒に解決策を考えてくれた。その上司は、マイクロソフトチームズで開かれる交流イベントに、ジェニーが参加しやすくする工夫もしてくれたという。