コロナ禍時代の従業員のケア

 ここまで紹介した会社の対応は多種多様だが、いずれも従業員をケアするという強力な組織文化が後押ししている。今回のインタビューで、その点で一致していることが明らかになった。さらに研究を進めると、これら企業の組織文化には、4つの重要な強みがあることがわかった。

 ●従業員が何を必要としているかを聞く方法を心得ている

 筆者の経験では、子育て中や介護中の従業員をサポートする組織文化がある企業は、まず従業員が何を必要としているかに耳を傾ける。このステップを省略する企業は、従業員にとって些細かもしれないが、重要な問題を見落とす可能性がある。

 たとえば、子育て中の従業員の多くは、夕方のミーティングを困難かつストレスに感じる。それをやめれば、誰にとってもプラスになる。会社には何らコストは生じないうえ、従業員は会社にサポートされていると感じる。

 こうした会社は、コロナ禍の間も従業員の声に耳を傾け続けた。それは『エデューケーション・ウィーク』のエマや、スポークンレイヤーのケイトに見られるように、従業員の変わりゆくニーズに迅速に対応するのを可能にする。

 ●コミュニティのつくり方を心得ている

 廊下ですれ違った時に言葉を交わしたり、コーヒーを飲みながら簡単な近況報告をしたり、仕事仲間の誕生日を祝ったりというように、自然な交流が起きる組織文化は、従業員がコミュニティ感覚を持つのに大きく貢献する。

 だが、コロナ禍で、こうした自然な交流は過去のものになってしまった。その現実に最もうまく適応している企業は、こうしたつながりが相手を思いやる文化で重要な役割を果たしていることを理解しており、リモートでつながる新たな方法を提供している。スポークンレイヤーの「ランチ&ラーン」や、エデルマンのズームでの交流がよい例だ。

 ●従業員がさまざまな役割を担っていることを尊重している

 働く家族に敬意を払うコミュニティ育成に力を入れていた企業は、コロナ禍の変化にリアルタイムに対応する態勢が最も整っていた企業でもある。なぜなら、今回のインタビューで明らかになったように、子育て中の従業員に柔軟に対応できる企業は、病気の配偶者や高齢者を介護しなければならない従業員にも柔軟に対応できるからだ。しかも、そのニーズは予期せず突然生じることが多い。

 職場と家庭の両方で多くの役割を担う従業員をサポートする経験を積んできた企業は、この半年間の劇的な変化の中で、従業員を最もうまくサポートできる傾向があった。『エデュケーション・ウィーク』のチームは、エマの息子がズーム会議に顔を出すのを歓迎することで、働く親としてのエマの役割に敬意を払っていることを示した。

 この状態がいつまで続くかわからないうえに、子どもの相手をしながら仕事をするのは、多くのエネルギーを消耗する。そうした時に会社が敬意を払ってくれることは、働く親にとって大きな贈り物になる。