公平な採用機会によって
人種的正義にどこまで近づけるか

 米国で黒人を犯罪者として扱いがちな傾向は、1860年代の奴隷解放宣言の時代に遡り、現在に至るまで、受刑者に占める黒人と中南米系の割合がいびつに大きな状況を招いている。さらに、黒人は長年にわたって、人種隔離や融資差別といった不利益を被ってきた。

 出所者が社会復帰を果たす時は、仕事に就くことを期待される。しかしそのためには、彼らの前科や、長期にわたる場合もある無職の期間を気にせず、積極的に職場に迎え入れてくれる雇用者を見つけなければならない。想像に難くないだろうが、これは非常に難しい注文だ。

 黒人の場合、そのような雇用者を見つけるのは、非常に難しい注文どころか不可能に近い。現在、米国の3人に1人には前科がある。研究によれば、面接後も選考に残れる可能性は、前科のある白人の場合は17%だが、前科のある黒人は5%にすぎない。

 これがいかに悲惨な状況を生み出すか、想像してほしい。黒人は、刑事司法制度で無数の不正義に直面するだけでなく、刑期を終えた後も多くの不正義を被るのだ。

 前科があるために仕事に就くことができない父親は、家族を養えない。その子どもは貧困の中で育ち、教育や雇用の平等な機会を得られない。こうして不平等のサイクルは続き、地域社会が苦しむことになる。

 研究によれば、雇用は常習犯を減らす最も重要な要因となっている。前述した父親が、公平な機会を与えてくれる雇用者に採用されたとしよう。安定した仕事を得て、雇用者は自分に投資してくれる。家族を養うことができ、地域社会にも貢献できる。犯罪を繰り返す可能性は、大幅に低下するのだ。