経歴ではなく、人物を評価する

 公平な採用機会プログラムは、米国の刑務所制度の不正義を取り除くことはできないが、その余波を阻止することはできる。

 研究によると、前科のある者は定着率が高い一方で、何らかの不正行為で解雇される確率は、前科のない者と変わらない。前科のある者が仕事を辞める可能性が統計的に低いことは、採用コストの大幅な削減につながる。さらに、従来にはないクリエイティブな問題解決、高い共感力とエンゲージメント、そしてユニークで価値ある視点がもたらされる可能性がある。

 そこで、公平な採用機会プログラムを導入する際に必要となる、いくつのステップを紹介しよう。

(1)意図的な採用計画を立てる

 まず、公平な採用機会について、エグゼクティブレベルで話をすることから始めよう。上層部の支持を得ることは重要だ。さもないと、組織全体として明確な変化を生み出すのは難しくなる。

 上層部の支持を得られたら、社内のさまざまな部門のステークホルダーから成るチームをつくろう。これには採用と人事、そして法務部門の関係者が含まれる。

 採用および人事の担当者は、公平な採用機会を確保するための具体的なプロセスをつくるとともに、採用者のオンボーディングに関して有効性の高い仕組みを考案するうえで重要な役割を果たす。法務チームは、法令遵守とリスク管理の側面からサポートしてくれるだろう。

 そしてここから、目的と目標、成功の尺度を描き始めることが、実現しうる最高のプログラムを構築するに助けになる。この段階では、以下の点を自問するとよいだろう。

・公平な採用機会プログラムによって、何を達成したいのか。
・このプログラムは自社のダイバーシティ、インクルージョン、そして信頼関係構築の取り組みにどのような影響を与え、どのように助けになるか。
・このプログラムが適用される候補者に、自社の採用プロセスをどのように受け止め、感じてほしいか。
・このプログラムが適用される人材を配置できるポジションが、現在または今後いくつあるか。
・どのように成功を測定すべきか。このプログラムが適用される人材を配置したポジションの数を見るべきか、それとも全社的なダイバーシティを見るべきか。
・その成功は半年後、1年後、あるいはその先はどのようになっているか。

(2)地域のパートナーと協力して、公平な採用機会で最高の人材を見つける

 公平な採用機会の実現に取り組むと、職場の多様化が進むだけでなく、地域の雇用開発組織と有意義な関係を構築するチャンスも得られる。

 前科のある者の社会復帰や公平な採用機会のための雇用開発組織は、あなたの会社のすぐ近くにある可能性が高い。地域の人材組織と協力することで、自分が手を動かして探さなくても、前科のあるトップクラスの人材に戦略的にアクセスできる。