●支援する
まず何よりも大事なのは、マネジャーの主な役割とは、パンデミックの有無にかかわらず、従業員を支援することである。
そして、いまほど支援が必要とされている時はない。世界規模の公衆衛生危機、不透明な経済、そして社会不安のまっただ中、2020年は極めて悲惨な年になろうとしている。「従業員は計り知れないほどのストレスを感じており」、なかには「ショック状態に陥っている」場合もあると、デイビーは語る。
手を差し伸べるのはマネジャーの責務である。出勤している部下とはソーシャルディスタンスを保ちつつ対話し、リモートワークをしている部下とは1対1でビデオ通話をするとよい。それぞれが置かれた状況を尋ね、どのような心配事を抱えているか把握する。
パンデミックが始まった当初は、こうした取り組みを頻繁に行っていたかもしれない。だが、その時点から状況が変わった可能性もあるため、引き続き様子を確認する必要がある。
オフィスに戻ってくるように要請されて、不安を覚えたり、あるいは憤慨したりする人もいるかもしれない。在宅勤務は仕事上、不利になると感じる人もいるかもしれない。
「自分がどう感じているか、それぞれが受け止められるようにサポートし、自分が何を心配しているのか口に出して言える」自由な雰囲気をつくるのがよいとヒルは言う。相手の話に耳を傾け、支援を申し出るのだ。
リーダーとして、メンバー全員に好ましい環境をつくることをコミットしていると行動で示そう。「人は、安全で大事にされていると感じたいのだ」とヒルは言う。
●期待を明確に設定する
次に、新たな方法とルールをつくることについてチームで話し合おう。
「この機会に、自社の組織文化で今後も守っていきたい部分を確認し、新たな環境に合わせて変えるべき部分について話し合うといい」とヒルは助言する。「いつ、どのようにあなたがコミュニケーションを取るか、誰がどのような情報にアクセスできるようにするか、誰がどのミーティングに参加する必要があるか、誰がどの意思決定に参加する必要があるかを、率直に話し合わなくてはならない」
コミュニケーションの規範についても、同意を取ることをヒルは勧める。常にチームメンバー全員宛てにメッセージを送るべきか、すべてのメッセージに関して受信した旨を全員が通知すべきか。メールとスラック、電話などのツールを使い分けるためのガイドラインも定めるとよい。
また、それぞれの勤務時間に関する計画についても話し合おう。
「終業時間が不明瞭になりつつある」とヒルは話す。「出社しない人は、柔軟性を必要としており、自由に勤務時間を組み立てる必要があるかもしれない。出社する人は、始業と終業の時間が定まっていることを望むかもしれない。時には、妥協が必要な場合もあるだろう」
リーダーとして目指すべきは、現在の環境において「チームにとって最良の働き方を見出すことで、新たな組織文化を構築し、それを根付かせることである」。