システムがインセンティブを上回る

 効果が他の方法を大きく上回ったのが、第1のグループに適用した指導下のミーティングである。この方法では、マネジャーはペアになった従業員とのミーティングを設定し、各営業担当者には事前に、前週の課題と成果を明らかにするための内省ワークシートを提供した。

 その後、ペアの従業員には、パートナーにインタビューして、自分のワークシートの反対側にパートナーのワークシートの回答を記録してもらった。こうして完成したワークシートとパートナーへのインタビューを行ってもらうことで、マネジャーは従業員に、問題を共有して、実行可能なアドバイスと励ましの両方を交換する機会を与えた。

 一方、インセンティブに勝るものはないという新古典派経済学的な視点を検証するため、ランダムにペアになった第2のグループには、個々の販売成績に対し、2人の合計の販売成績を伸ばすためのインセンティブが与えられた。

 これは、明確な目標の一致が知識共有を促すという考えに基づく。マネジャーは、このグループの従業員にはミーティングの実施や助け合いを指示せず、一致した目標を持つ従業員の自己管理に頼った。

 第3のグループには、ペアのパフォーマンスに対するインセンティブと、指導下のミーティングの「両方」の機会が与えられ、マネジャーが社会的障壁の打破とインセンティブの提供の両方に焦点を当てる必要があるかどうかを検証した。

 これら3つのグループと対照群とを比較すると、指導下のミーティングとインセンティブ重視のアプローチでは、効果に顕著な差があることがわかった。

(1)無作為に選ばれたパートナーと指導下のミーティングを行った従業員は、ミーティングが行われた4週間の間に、販売効率が平均で24%上昇した。明確なインセンティブのみが与えられた従業員のペアは、同じ4週間のパフォーマンスの向上率は13%だった。

(2)指導下のミーティングを行った従業員の販売効率の上昇は、ミーティングが終了した後も継続した。数カ月後の彼らの販売成績は、ミーティングを行っていない従業員らに比べて平均18%高かった。対照的に、インセンティブのみを受けたグループは、長期的な成果は得られなかった。

(3)ミーティングの最大の恩恵を受けたのは、ハイパフォーマーの同僚とペアを組んだ従業員だった。ハイパフォーマーの同僚とともに仕事特有の問題をたった一度のミーティングで話し合うことで、長期的なパフォーマンスに影響をもたらす可能性があることが研究で示された。重要なのは、第一にマネジャーがそうした相互作用の機会をつくり、指示を出すことだ。

(4)販売データを調査した24週間で、この提携企業は指導下のミーティングを行った従業員の間で7桁の収益増を実現した。導入コストは1万5000ドルにも満たない。

 研究では、インセンティブはほとんど影響を与えないことがわかった。ミーティングとインセンティブの両方の介入を受けた第3のグループの従業員も、販売成績は向上したが、指導下のミーティングだけを行った従業員には及ばなかった。

 総合すると、研究結果が強く示唆するのは、この企業で情報共有が不足している原因は社会的摩擦、すなわちパフォーマンスの高い同僚と彼らの戦略について話し合うことを依頼する、気まずさや恥ずかしさにあるということだ。

 簡単に言えば、同僚とのこうした交流が深く考えられ、意図的に行われれば、パフォーマンスの低い従業員の成績を向上させることができるということだ。

 研究は新型コロナウイルスのパンデミックの発生前に、2つのフィジカルなキャンパスで行われたが、バーチャルな職場にも同じ基本原理が存在する。実際、バーチャな職場のほうがより効果が高いかもしれない。

 多くの人々が気づいているように、リモートの同僚がいつ質問に答えられるのか、あるいは単に話ができるのかを見極めるのは非常に困難で、助けを求めることをいっそう躊躇してしまう。

 あらゆる規模の組織が、パンデミック下で新たなテクノロジーをいち早く取り入れ、コアビジネスのニーズを提供している。フィジカルなプレゼンスの代わりにテクノロジーを利用することが新たな社会的摩擦を生む一方で、上述した指導下のミーティングの導入コストを低下させている。

 研究の提携企業が導入したのとまったく同じマネジャーによる介入が、マイクロソフトが最近リリースした「マイクロソフト・チームズのアイスブレーカー・ボット」で自動的に行える(筆者らは開発には関与していない)。

 同社のプリンシパル・エンジニアリング・マネージャーで、アイスブレイカー・ボットの前身のボット「ミートアップリー」(Meetuply)を開発したシド・アップルは、マイクロソフトと一部の顧客企業において、従業員のスケジュールの中から時間を見つけてバーチャルな会議を設定することで、このアプリケーションは「チームがよりつながりやすく、インクルーシブで、活気があり、新しいチームメイトやリモートのチームメイトを受け入れ、最終的により力強く有効性を高める支援をするうえで、大きな違いをもたらした」と述べている。

 バーチャルな人材管理に関する便益を特定するには、さらなる研究が必要だ。しかし、今回の研究結果とマイクロソフトのこれまでの経験を合わせると、将来的にはデジタルツールを活用することで職場での社会的なつながりを促進し、意欲と生産性を向上させることができると、筆者らはとても楽観視している。


HBR.org原文:Research: How Virtual Teams Can Better Share Knowledge, November 02, 2020.


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