
コロナ禍を機に多くの企業がリモートワークを導入し、制度として恒久化させる動きも少なくない。リモートワークの利点が明らかになる一方で、コミュニケーションに関する問題、とりわけリモート環境下で高度な協働をどう実現するかは喫緊の課題だ。物理的に離れた従業員間に会話を自然発生させ、そこから新たな協働の機会をつくるには何をすべきか。本稿では、パンデミック前から大規模なグローバル事業部門で遠隔勤務のチームを率いてきたリーダーが実践する、3つのテクニックを紹介する。
米国の労働者の約3分の1は、かれこれ6カ月以上、全面的でないにしても何らかの形でリモートワークを経験してきた。そのためマネジャーは、リモートチームを管理監督するための基本的なベストプラクティスをおおむね実践してきたといえる。
このままリモートワークを継続する予定の企業も少なくない。在宅勤務(WFH)を制度として恒久化させる企業も出ている。
そうした中、多くのリーダーは、リモート勤務する従業員を長期にわたってサポートするには、新たな方法や習慣をつくる必要があることに気づき始めている。筆者が、研究やエグゼクティブトレーニングの一環として会話を交わした多くのマネジャーにとって、従業員同士が互いにつながる機会を創出することは最重要事項なのだ。
これまでの研究結果から、リモート環境下において高度の協働を必要とする仕事は困難に直面することが明らかになっている。非公式に情報を共有したり、質問をしたりすることが難しくなるからだ。
リモート勤務の従業員はオフィスに出社勤務している時に比べて、社会的にも、仕事上でも孤立した感覚に陥るという報告も数多い。もちろん、バーチャルランチやハッピーアワー、オンラインでのチームビルディングゲームが何の役にも立たないわけではないが、職場で日々生じる気軽な交流に代わるものではない。
マネジャーが、オフィスで自然発生する非公式のやり取りをどうすれば再現できるのか。筆者はさらに考察を深めるべく、リモート環境での豊富なリーダーシップ経験を持つエグゼクティブに話を聞くことにした。
マーク・ストラスマンは、20年近くにわたってリモートチームを率いてきた人物だ。現在は、カリフォルニア州を拠点とするコミュニケーションテクノロジー企業、ログミーイン(LogMeIn)のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めている。
ストラスマンが率いるのは、2000人規模のグローバル事業部門だ。そのうち約25%が、パンデミック前からリモート勤務をしていた。ログミーインは、新型コロナウイルス感染症関連の制約がなくなっても、ほとんどの従業員の勤務体制を、少なくとも部分的にリモート化する予定だという。
カギとなるのは、従業員が勤務時間中に自由に同僚と過ごせる機会をつくることだと、ストラスマンは話す。そのような時間を設けると、社会的に孤立しているという感覚が和らぎ、自然発生的な協働が増えたり、創造性が高まったりするという。しかも、すでに予定が詰まっているカレンダーにミーティングを追加する必要もない。
その結果、バーチャル空間で一緒に働く従業員の間にエネルギーや集中力が増すと、ストラスマンは説明する。これは「社会的伝染(social contagion)」のメカニズムと関連性があるからだと推測される。一緒に勉強する学生同士や「フィットネス仲間」としてペアを組む友人同士の間に見られるダイナミクスに近い。
ストラスマンは、従業員がバーチャル空間でつながって協働できるようにするための、お気に入りのテクニック3つを紹介してくれた。