●産休明けの母親をサポートする制度や方針がほかにあるか
企業は、子どもを出産したばかりの従業員が「働く母親」としてうまく機能できるように、強力な制度や方針を整備しなくてはならない。SHRMによると、米国企業の81%が、産休から職場復帰するにあたり、フルタイムに戻るまでの段階的復帰を認めている。
ただし、こうした段階的復帰を希望する女性もいれば、別の働き方を希望する女性もいる。企業はすべての要望に応えられるよう、フレキシブル勤務、パートタイム勤務、ジョブシェアリングなど複数の選択肢を用意しよう。
また、すべてのオフィスに、母親が1人で快適に搾乳できる搾乳室を設ける。病院並みの搾乳機を設置するのもよい。そうすれば彼女たちは、自分の搾乳機ではなく、必要なパーツを持ってくるだけで済む。母親ルームには、快適な椅子と冷蔵庫、洗い場、電子レンジを置きたい。出張のある仕事に就いている女性には、母乳を自宅に送る仕組みがあると大いに助かる。
もう一つ重要なのは、緊急時のチャイルドケアだ。今回のコロナ禍で導入した企業も多い。フェイスブックやグーグル、セールスフォース・ドットコムといった大手テック企業は、育児や家族の看護や介護が必要な従業員に有給休暇を追加している。
●離職防止の成否をどう把握するか
測定できることは、実現できる。働く母親の離職を防止できているかどうかは、たとえば、産休や育休から復帰する人数を追跡すればわかる。離職するのは仕事をしたくないからだと思い込んではいけない。第1子の出産後、第2子以降の出産後、どのくらい休みを取ったか調べよう。
パタゴニアはこのデータに注目して、働く母親の高い定着率を実現している。社内に託児所を導入したり、従業員の家族を大切にする組織文化を構築したりすることで働く母親をサポートしている。
子どもが生まれたばかりの従業員に、会社に最も求めることは何か尋ねる。ラウンドテーブルを開催して意見交換をしたり、聞き取り調査を実施したりして、彼らのニーズに応えられているか確かめる。小さな子どもがいる従業員にとってよりよい職場環境をつくるためには、幅広くアイデアを集め、協働で解決策を見出すことが欠かせない。
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経営幹部は、有給休暇以外にも、子どもが生まれたばかりの従業員、とりわけ女性をサポートするインフラ整備に力を注がなくてはならない。そうすれば彼らは、あなたの会社で長期的にキャリアを構築したいと考え、そして家族も大切に育てていきたいと思うだろう。
HBR.org原文:Maternity Leave Isn't Enough to Retain New Moms, November 30, 2020.