私は産休に入る前のことを思い返した。妊娠後期に入ったから出張はやめるようにと医師に言われた時、上司はいい顔をしなかった。妊娠7カ月の時、緊急の仕事で夜11時まで残業したことがあったが、夕食のデリバリーを注文したらと言ってくれた人は誰もいなかった。結局、飛行機でもらったクラッカーがカバンに入っているのを見つけて食べたことをいまでも覚えている)。

 出産予定日の数日前に産休に入る時、同じポジションに戻れると上司は約束してくれた。でも、もうそんな言葉は信用できない。結局、産休中に別のチャンスを見つけて、私はその会社を辞めることにした。

 この出来事から学んだのはシンプルなことだ。産休を取得できるからといって、初めての出産を終えた母親がサポートされるとは限らない。

 米国企業に労働法と職場における法令遵守に関する助言をするリトル・メンデルソン法律事務所で、パートナーを務める弁護士のアシャ・サントスは、同様の考えを示す。「産休前、産休中、そして職場復帰直後の待遇は、会社が当該の女性を引き止めておけるかどうかを左右する」

 米国人材マネジメント協会(SHRM)によれば、米国企業で12週間の産休を提供している組織は60%、さらに育休を認めている組織は33%だ。

 もっと包括的な制度や方針を定めている企業もある。スポティファイ、エッツィー、ツイッターなどの企業は、母親だけでなく父親にも有給の育休を与えている。米国のように、有給の育休付与が法律で義務づけられていない国で、企業がその空白を埋めている格好だ。

 だが、有給休暇を与えるだけでは足りない。働く親をサポートするには、企業はもっと広範なエコシステムを構築する必要がある。初めて子どもが生まれた従業員、特に女性を引き止め、能力開発を進め、後押しするにあたって、検討すべき5つの問いがある。