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新型コロナウイルス感染症の流行が収まる気配はなく、感染拡大を防止するために2度目のロックダウン(都市封鎖)を決めた国も多い。ロックダウンはいずれ解除され、従業員は少しずつ職場に戻り始めるだろう。その時、従業員が意欲的かつ生産的に働けるように、マネジャーは何をすべきか。本稿では、中国・武漢で実施した調査をもとに、重要なポイントを提示する。


 コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)のさなかでマネジメントをどう行うべきかについては、多くのことが論じられている。しかし、ロックダウンとソーシャルディスタンスの義務がやがて解除された後には、マネジャーは自身とチームを成功へと導くために何ができるだろうか。

 筆者らはこの問題を探るべく、中国・武漢全域の厳重なロックダウンが2020年4月初旬に解除されてからわずか3週間後、同市で働く350人の従業員を対象にアンケート調査を実施した。

 回答者の大半はロックダウン期間中に、雇用主の休業による仕事の中断を余儀なくされた。そして雇用主側は、通常営業に一刻も早く復帰し、ウイルスの再流行防止にも全力を尽くそうという意欲を募らせていた。

 この調査で特に注目したのは、回答者が自分自身およびチームのために業務復帰への準備をどのように整えたのかである。過去の研究では、仕事への心理的準備がいかに重要なのかが立証されている。そこで回答者には、職場復帰に向けた準備として何をしたのか(しなかったのか)を尋ねた。

 加えて、「自分の上司は職場の健康・安全の推進に尽力している」と、どれほど感じられるかも尋ねた(上司自身がマスクを着用している、安全規則の重要性を伝えている、など)。

 そして約4週間後、職場での従業員の意欲と生産性を測定するフォローアップ調査を行った。従業員とマネジャーのどんな行動が仕事への意欲と相関しているのかを、見極めるためである。

 調査の結果、次のことが判明した。意欲とパフォーマンスが最も高いのは、従業員自身が業務復帰に向けて心理的準備をして、なおかつ自分のマネジャーが職場の健康・安全への尽力を行動で示している場合である。

 重要なのは、どちらか一つの要素のみでは不十分という点だ。ロックダウン解除後に従業員の意欲と生産性を確保するために、従業員とマネジャーの双方に求められる大事な役割がある。

 では、この困難な時期にマネジャー自身と部下の意欲を維持するには、何が必要なのだろうか。

従業員:
しばらく時間をかけて、仕事に戻る準備をする

 ロックダウンは多くの人々の仕事に、深刻な混乱を与えた。

 まず、少し時間を取ってこの事実を受け入れよう。立ち止まって振り返りと復帰準備をすることなく、日常業務にいきなり戻ろうとするのは禁物だ。過去の研究によれば、大きな混乱と精神的痛手を伴う出来事を経験した後で仕事に戻る従業員は、業務への集中に苦労する場合があり、しばしば何らかの再調整が必要となる。

 ロックダウン解除後の労働意欲を高めるには、身体的な準備だけでなく、復帰に向けて心の準備も整うよう万全を期すことが大事だ。復帰前にしばらく時間をかけて、過去の進捗を振り返ったり、今後の目標に向けて優先事項を決めたり、短期的・長期的なやることリストをつくったりすると非常に効果的であったことが、今回の調査で判明した。

 身体トレーニングの前に少しストレッチをすれば体のエンジンがかかるのと同じように、いくつかのシンプルな心理的準備によって、復帰時に意欲を保つことができる。