1. 交流と学習のための豊かな環境を築く
マッキンゼーのどのオフィスでも一般的に見られる特徴は、「スーパーフライデー」である。これは全員にオフィスへの出勤が求められる、毎月指定された1日を指す。オフィスのマネージングパートナーは、この時間が必ず有意義に使われるようにするために、特別な昼食会、対話集会、実務会議、ハッピーアワーなどを開催する。
そして年に1度か2度、オフィスから離れての社外研修を予定に入れる。共通の関心事項(たいていは社内の調査・研究活動)についての充実した議論と、懇親会を組み合わせたものだ。彼らはまた、あらゆる機会を捉えて昇進や個人の達成を祝福する。
全社的な決まりとして、世界中の全オフィスは毎年「バリューズ・デイ」(Values Day)の開催を義務付けられている。マッキンゼーの文化を支える規範、信条、根本的前提に対する社員のコミットメントを再確認する、という明確な狙いがそこにはある。典型的な内容は、価値観をめぐる課題に関するロールプレイ、オフィスの規範強化に向けたグループに分かれての議論、社内のリーダーと外部の専門家による基調演説などを組み合わせたものだ。
これらを含む諸々の方法で、マッキンゼーのような会社は物理的なオフィスを、社員が実際の日常業務のほとんどを行う場所として設定するのではなく、バーチャルワークにおける価値観を強化するための補完手段として再概念化してきたのである。
オフィスを交流と学習のための環境として再定義するこの取り組みは、全社レベルで推進されている。社会的つながりと学習意欲は同社の現在の文化において骨組みを成すが、それらの構築と維持に寄与しているのは、グローバルなパートナー会議、研修プログラム、実務会議、業績評価委員会、そして多国籍のメンバーから成る顧客サービスチームである。
一例として、マッキンゼーは毎年、新たに昇格したエンゲージメント・マネジャー(通常はキャリアの3年目)を全員、ケンブリッジ大学で行われる「EMカレッジ」と呼ばれる1週間の研修プログラムに招く。
このプログラムで貴重なのは、学ぶ内容以上に、忘れがたい環境で出会う人たちだ。彼らが築く社会的つながりと共有する儀式は、社内での自分のキャリアにとって支えとなる。社員たちはオフィスへの出社も同僚との対面も頻繁にはしないが、実際に会う時にはその場を有意義なものにするのだ。