虐待的なリーダーシップのサイクルを止める

 筆者らが研究の最後に忠告したのは、上司が部下を虐待し、その後に好意的に振る舞うことを許すことで、組織のリーダーや従業員は、多くの企業に蔓延している虐待のサイクルを助長してしまうということだ。

 残念ながら、筆者らの研究やその他の研究でも、有害な上司は私たちが望むようには変わらず、ひどい態度は継続するか、多くの場合は悪化する。虐待的な上司は、延々と暴言を吐いた後に心から悔いているように見えても、実は利己的な動機を持っているのだ。

 筆者らの調査によると、自己中心的で操作的で野蛮な行動のサイクルを断ち切るために組織のリーダーができることは、その上司がひどい行いの埋め合わせをしているように見えたとしても、そうした行動に対するゼロ・トレランス(不寛容)の方針を実施し、その方針を一貫して守ること以外にはほぼない。特に、虐待的な行動は処罰によって抑制されることが過去の研究で示されている。寛容さではなく、処罰が重要だ。

 とはいえ、上司の行動を組織の制度や方針で完全に管理することはできない。上司が部下に対して良識や礼儀を示すことができるのかどうかは、最終的には本人次第だ。彼らが誠意を持って謝罪し和解することが、信頼を回復し、礼節を欠いた行動を改めるための唯一の持続可能な方法だ。

 さらに、上司は部下の認識を操作しようと表面的に取り繕うことで疲弊する可能性があり、真摯に行動することが欠かせない。彼らにとって最善の行動は、虐待的な行為をした後に自分の動機や行動を認識することだ。

 上司がモチベーションを維持するために、毎日自分の動機を振り返ることを推奨するもある。たしかに、行動の過ちについては、そうした内省をすべきだ。

 上司が日々、自分の行動と動機を真摯に評価し、自分の行動が部下に与える影響を慎重に振り返れば、間違った行いをした時に「親切な振りをする」のではなく、本当に「親切にする」ことができるようになるだろう。


HBR.org原文:Stop Making Excuses for Toxic Bosses, January 19, 2021.