●感情と向き合う。その感情の良し悪しを判断したり、それをコントロールしようとしたりしない

 マインドフルネスの第一歩は、自分の感情を理解することだ。多くの人は、みずからの感情を感じ取る能力が乏しい。ミーティング続きで激しいストレスにさらされている人は、自分がどのような感情を抱いてさまざまな場に臨んでいるかを自覚していない場合が多い。

 研究によると、自分の感情を言葉にして表現することにより、ある経験に伴う苦痛を和らげることができるという(表現が具体的であればあるほど好ましい)。

 日々の生活の中でいら立ちや不安や悲しみを感じた時は、少し立ち止まってみよう。呼吸に意識を集中させ、自分の経験について言葉で言えるかを考えてみるとよい。そして、その感情が自分の身体のどこに位置するものかを考えよう(たいていの人は、自分の感情が身体のどこかに存在しているように感じるものだ)。

 その際、その感情を変えたり、どうにかしたりすることを目指すべきではない。あるがままに観察することが重要だ。

 その感覚はどのようなものかを考えよう。すると、肉体的感覚と感情が次第に変わっていくことに気づく場合が多い。たとえば、悲しみの感情を抱いた時、最初のうちは胸が締めつけられるように感じるが、やがて心臓を刺されたような感覚に変わる場合もあるかもしれない。

 感情を否定しようとするのではなく、その感情に適切に注意を払えば、多くの場合、その感情が動き、やがて消滅する。このようなアプローチは、自分の感情を受け入れることに慣れていない人にとっては、驚くべき発想の転換と言えるかもしれない。

 ●ストーリーを捨てる。感情は捨てない

 私たちの精神は、思考を生み出す機械のようなものだ。自分が抱いた感情に対しても、すぐに何らかの説明を導き出す。

 そうした説明の多くは、他者を非難するという形を取る(「いま私が腹を立てているのは、上司が私のプロジェクトを助けてくれないせいだ」といった具合だ)。あるいは、自分がその感情を抱く理由を見出そうとするケースも多い(「クライアントの表情を見ると、私のことが好きでないのは明らかだ」などと考える)。

 しかし、マインドフルネスを実践すれば、自分がその感情を抱く引き金になったのは外的な出来事だったとしても、そうした感情を持つに至った原因は、その出来事に対するみずからの解釈だったことに気づける。このような認識を持つことにより、私たちは主体性を取り戻すことができる。

 私たちが自分自身に対して語るストーリーにはしばしば終わりがなく、ストーリーを語れば語るほどそのストーリーが強まり、さらに新しいストーリーが紡ぎ出される。

 その点、マインドフルネスを実践すれば、そのようなストーリーを信じ込む姿勢を少しずつ捨てられる。マインドフルネスの大きな目的は、自分が特定の思考に囚われていることを自覚し、自分の呼吸に再び意識を集中させることなのだ。

 ストーリーを捨てるといっても、現状を受け入れろというわけではない。むしろ企業幹部たちは得てして、ストーリーを捨て、環境や他者を非難することをやめてはじめて、自分の置かれている状況に向き合える。

 企業幹部のコーチングを行って自己変革に導こうとする時は、環境や他者を非難するのではなく、まずその人が感じている悲しみや精神的消耗や不安と向き合えるようにしなくてはならない場合が多い。そうすることにより、方向転換に踏み切るための勇気を奮い起こせるのだ。

 感情を捨てず、ストーリーを捨てることにより、好奇心と学習への意欲を持って状況に向き合うことができる。そして、その感情の土台にあるエネルギーを活用して行動を起こせるようになる。過去から未来に、そして未来の可能性に、関心を移しやすくなるのである。