●感情を覆い隠すのではなく、表面に引っ張り出す

 会議の冒頭でマインドフルネスを実践し、そのあと「いまどのように感じていますか」といったシンプルな問いを投げ掛けることにより、出席者同士が互いの感情を知るチャンスが大きく広がる。それを通じて、親密さと絆が強まると期待できる。

 筆者は以前、ある企業でリーダーチームの合宿研修でファシリテーターを務めたことがある。その会社ではその直前に、2つの部署が合併され、1つのリーダーチームがつくられたばかりだった。マインドフルネスのエクササイズを行うことで見えてきたのは、両チームの出身者が合併に対して怒りや不安、悲しみの感情を抱いていることだった。

 そこで、筆者は議論をストップさせ、自分のチームが廃止されたことを悲しむ機会を持てたと思うかと尋ねた。すると、メンバーは驚いたようだった。職場で悲しみの感情に大きな関心が払われることはあまりないからだ。

 しかし、その感情は変革のプロセスで大きな意味を持つ。メンバーは驚きつつも、部署の合併により何を失ったと思っていて、それについてどのように感じているかを、ひとしきり話し合った。

 こうした話し合いは、すべての人にとってとても濃密な経験で、感情を激しく揺さぶられる時間だった。その経験を通じて、メンバーの連帯感がいっそう強固になった。自分の感情について率直に語ることではじめて、ほかの人たちもみな、同じように感じていたことがわかったのだ。

 感情を表面に引っ張り出すとは、その瞬間の衝動に駆られて感情をあらわにすることではない。じっくり内省したうえで、自分の感情について語ることが重要だ。

 マイナスの感情を抱いた時には、その原因として他人の行動を非難するのではなく、そうした他人の行動や状況についてのみずからの解釈を述べてみる。そして、その解釈に基づいてどのようにみずからの感情が生まれたかを明らかにする。

 最近、筆者がある大手テクノロジー企業で行ったマインドフルネスのワークショップで、幹部の一人がこう打ち明けた。他人(同僚や子どもなど)に対して、感情的になるなと命じることが多い、というのだ。「取り乱す理由なんてないじゃないか」などと軽蔑的な言葉をよく用いるとのことだった。

 しかし、マインドフルネスのワークショップを通じて、ほかの人たちの抱く感情を認めることで、自分自身が解放感を味わえ、周囲の人たちも自分が尊重されているように感じられることに気づいた。それにより相手は平常心を抱けるようになり、不安や恐怖の感情が弱まった。こうした効果に、この人物は驚かされた。

 メンバーの不安の感情を受け入れるのはどのような気分なのかと尋ねると、この人物は少し沈黙し、やがてこう答えた。「怖いです」。そして大きく息をつくと、にっこりとほほ笑んだ。


HBR.org原文:Now Is a Great Time to Start Practicing Mindfulness, January 27, 2021.