(1)完璧主義をやめる

 完璧主義は、迅速で効果的な意思決定を阻む最大の障壁の一つだ。なぜなら、妥協を許さないオール・オア・ナッシングという誤った考え方に基づいているからだ。

 たとえば完璧主義は、「正しい」選択をしなければ失敗であるという思い込みにつながる(あたかも正しい選択肢が一つしかないかのように)。あるいは、「何もかも」を把握し、起こりうるすべての事態を想定し、行動を起こす前に綿密な計画を整えておくことが必須であるという考え方にもつながる。生じうるすべての結果と検討事項を考慮しようとすれば、麻痺を起こしてしまう。

 この傾向を抑えるために、以下の問いを自問してみよう。

・自分の最優先事項に最もプラスの影響を及ぼす意思決定はどれか。
・私のせいで喜んだり不愉快になったりする可能性のあるすべての人の中で、最も落胆させたくない相手を1~2人挙げるとすれば誰か。
・自分の目標に近づくために、今日できる一つのことは何か。
・現時点での自分の知識と情報に基づいて、次に取るべき最善のステップは何か。

 結局、数カ月先や数年先を予想しようと試みるよりも、次に取るべきステップを一つだけ見極めて行動を起こすほうが、はるかに容易である。

(2)問題の大きさを適正化する

 熟考に値する意思決定もあれば、そうでないものもある。決断を下す前に、それがどの目標や優先事項に影響を及ぼすのか、または自分の生活に関わる人々のうち誰に影響するのかを書き出してみよう。そうすることで、有意義な事項とこだわるに値しない事項とを区別しやすくなる。

 さらに、決定が失敗を招く可能性が心配であれば、「10/10/10テスト」をしてみよう。失敗の予感に囚われたら、その選択について10週間後、10カ月後、10年後にどう感じるかを考えてみるのだ。おそらくその頃にはどうでもよくなっているか、重要な選択であったと覚えてすらいない可能性が高い。

 このテストの答えは、物事を大局的に見つめ、行動を起こすために必要なモチベーションを取り戻す一助となる。

(3)過小評価されている直感の力を活かす

 直感は脳内のパターン合わせゲームのように機能する。脳が状況を検討し、瞬時に当人の全経験を査定して、状況に見合った最善の決定を下す。この自動的なプロセスは理性的思考よりも速い。つまり、短い時間しかなく一般的なデータが手に入らない場合に、直感は必要な意思決定手法なのだ。

 実際に研究によれば、知力のみに頼るよりも、直感と分析的思考を組み合わせるほうが、意思決定の質、速度、精度が高く、選択に対する自信も高まることが示されている。

 ある実験で、慎重な分析のみに基づいて車を購入した人のうち、最終的に自分の購入判断に満足した人は25%であった。一方、直感に基づいて購入した人の場合は60%が満足した。この理由は、素早い認識、あるいは薄切り判断(thin-slicing)[編注]によって、脳は考えすぎずに賢明な判断ができるからである。

 前述したプロダクトリーダーのテレンスは、直感に基づいて決めるというアイデアに大いに興味をそそられ、ついには「脱抑制の日」を計画した。この日は24時間、すべての言動を自分の直感に従って行うのだ。

 その結果、直感に従うことで、自分自身への検閲をやめて難しい決断を下す勇気が生まれた。たとえそれが一部の関係者の困惑を招くかもしれないとわかっていても、である。

「自分の決定の内容だけでなく、それをどのように下したのか、いかに素早くできたか、それを自分でどう感じたかも変わりました」と、彼はのちに話してくれた。「目の前にあるどんな物事に対しても、最高のマインドセットで臨むことができたのです」

 あなたも「脱抑制の日」を試してみよう。あるいはシンプルに、今日数分の時間を取って、過去に自分の直感を信じた経験を3~5つほどリストアップし、その結果が好ましいものだったかを考えてみるとよい。