(4)決断疲れによる消耗を減らす

 人は1日に数百もの意思決定を下している。朝食に何を食べるかに始まり、メールにどう返信するかまで、その判断一つひとつが脳と感情の資源を消耗させるのだ。

 消耗している時は考えすぎに陥りやすい。したがって、些末な意思決定をより多く取り除くことができれば、その分本当に重要な意思決定のためのエネルギーが温存される。

 脳の能力を節約するためのルーチンと習慣をつくってみよう。1週間の食事計画や、カプセルワードローブ(本当に必須かつ組み合わせ可能な服を少数厳選して揃え、着回すこと)などでもよい。

 同様に、特定の判断事項を全面的に取り除く機会を探そう。たとえばベストプラクティスと標準化された手順を導入する、権限移譲する、会議への参加を取りやめる、などがある。

(5)創造的な制約を設ける

 仕事の量は与えられた時間の分だけ膨張する、という「パーキンソンの法則」をご存じの方もいるだろう。簡単に言えば、あるプレゼンテーションの作成に1カ月という期間を自分自身に与えると、完成までに丸1カ月かかることになる。しかし1週間しか与えなければ、同じプレゼンをもっと短期間で完成するはずだ。

 繊細な努力家たちにおいても、似たような原理を筆者は目にしてきた。考えすぎも、与えられた時間の分だけ膨張するのだ。つまり、実際には1時間しか要さないタスクについて、心配する時間を1週間自分に与えれば、膨大な時間とエネルギーを無駄にすることになる。

 この傾向を抑えるには、創造的な制約(creative constraints)によって説明責任を設けるとよい。たとえば、選択を下す日や時間を決める。それをカレンダーに記入し、携帯電話にリマインダーを設定する。あるいはその意思決定を待っている相手に連絡し、こちらからの返事がいつになるかを知らせてもよい。

 筆者のクライアントたちが好んで実践しているのは、「心配する時間」(worry time)である。1日のうちごく短時間を、問題に対して建設的に向き合うために確保しておくという習慣だ。

 何より忘れてはならないのは、思考の深さは大きな競争優位であることだ。考えすぎを抑えることを学べば、自分の繊細さを活かして強力な武器にできるはずだ。

[編注]非常に限られた経験の断片に基づいて、状況や行動におけるパターンを無意識のうちに見出す能力。


HBR.org原文:How to Stop Overthinking Everything, February 10, 2021.