●新しいアイデアをほめるだけでなく、人間関係を強化する

 前代未聞の混乱の時代には、リーダーがデジタル・ディスラプションやプロダクトの再発明、組織変革といった、現状を打破するようなアイデアに未来を賭けたくなるのは無理もない。だが、未来主義のアイデアに賭けるリーダーは、同僚を明るい気持ちにさせる人間的・感情的なつながりを見落としてしまうことがあまりに多い。

 瞑想の代表的な指導者として知られるシャロン・サルツバーグは、ケアギバーや教育者、そして社会を変える活動家と仕事をしている。つまり、善意を持って大きな変化を生み出そうとする人々だ。

 サルツバーグは彼らに、まず自分の「半径3フィート(約1メートル)の影響圏」をケアするよう促す。顧客や患者、自分の最も近くにいる人々やチームだ。

「世界をいっきに変えるほど力強く、説得力があり、粘り強く、カリスマ性がある人物はほとんど存在しない」と彼女は言う。「私たちが影響を与えようと試みることができる一番の世界は、自分を取り囲んでいるすぐ近くの世界だ」

 ●大量の悪いニュースに対抗するために、あらゆるよいニュースを共有する

 心理学者の意見は互いに一致しないことが多いが、「人間は本能的に、よいニュースよりも悪いニュースに反応する」という点では、ほぼ全員の意見が一致する。職場の人々の間に楽観主義を維持するには、リーダーは希望に満ちたエピソードやポジティブな出来事を強調すべきであり、それが時として過剰になっても構わないと彼らは助言する。

 クイーンズランド大学教授で、現在は世界各地の大学で教鞭を取る心理学者のロイ F. バウマイスターは「1つの悪い物事を乗り越えるには、よい物事が4つ必要」だと見積もる。

 あなたのチームが重要なマイルストーンを達成した時は、いつもシャンパンを(バーチャルに)開ける。新規顧客を獲得した時には、部門全体でズームパーティを開催する。うまく進んでいることを強調するニュースレターを配信することで、うまく進んでいないニュースの穴埋めをする。そして、自分自身に対しても同じように対応する。

「ソーシャルメディアで嫌味なコメントがあっても気にして悩むのではなく、スクロールしてほめてくれるコメントを4つ、繰り返して読むのがよい」と、バウマイスターは推奨する。

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 いまは、エネルギーに満ちあふれた明るい気持ちを維持するのが困難な時代だ。ここまで紹介してきた4つの助言が、あなたと同僚が楽観的な気持ちを取り戻す助けになることを願っている。

 もし、それでも不十分な場合には、いつでもオプティミスト・インターナショナルに参加できる。新メンバーを募集中だと聞いている。


HBR.org原文:How to Stay Optimistic (When Everything Is Awful), February 25, 2021.