実践からのアドバイス

 ケーススタディ(1)周囲が安心して話せるロールモデルになる

 ピンタレストのコンテンツ部門で働くメレディス・アーサーは、サンフランシスコで創業間もないスタートアップにいた時、メンバー全員の勤務地が異なるカスタマーサービス・チームを管理することになった。

 そのポストに就いてから1カ月ほどして、直属の部下の女性から、精神的な問題を抱えて、数年前に近親者が自殺していると聞かされた。

 メレディスはまず、自分に話しても大丈夫だと思ってくれたことに感謝を伝えた。自分がメンタルヘルスの分野に取り組んできた経験をオープンにしていたから、部下は安心できたのだろう。

 メレディスは「考えすぎる人、他人の言いなりになりやすい人、完璧主義者」のためのサイト「Beautiful Voyager(ビューティフル・ボイジャー)」を運営していた。ストレスや不安を抱え、深く考えがちな人々を結びつけるというサイトの使命などについて、職場でもオープンに話していた。

「私がこの分野に献身的に取り組んでいることを、社内の皆が知っていました。自分にとっていかに重要な問題なのか、私は率直に話していたのです」

 メレディスはその部下に、「私にもっと教えてほしい。話をしましょう」と声をかけた。そして、2人は話をした。

「彼女は自分のこと、自分の状況のこと、希望や夢のこと、健康面で直面していることを、さらに詳しく話してくれました。私がメンタルヘルスについて理解するまでの道のりや、日々の生活の中でメンタルヘルスが果たす役割について、率直に話していることも彼女は知っていました。私の経験を知って、安心して話せると思ったそうです」

 最初の会話は約45分続き、その後も何回も話をした。「私たちは彼女のスケジュールや健康状態を定期的に確認しました。セラピーの予約があることも知らされていたので、彼女が向き合うことによってスケジュールが影響を受けることや、それについて緊密に連絡を取り合うことが大切だとわかっていました」

 メレディスは、直属の部下であるこの女性が体調を管理しやすいように、いくつか対応を変えることができた。チームミーティングを欠席せざるをえないときや、彼女の勤務時間を調整することもあった。急に数日間、休みを取ることもあった。幸い、いずれも仕事に影響を与えることはなく、メレディスは柔軟に対応できた。

 メレディスは自身の経験をもとに、部下の不安を和らげる手助けができた。「彼女はチームの前で話したがりませんでした。彼女がシャイなことは知っていましたが、(彼女のメンタルヘルスに関する)新しい情報を得た私は、不安に共感して理解する段階の次を考え始めていました」

 メレディスは、完璧な対応を目指しているわけではないが、部下に成長してほしいと思っていることを彼女に説明した。「私は彼女に、もっと自分のことをチームの皆に話そうと励ましました。そして、彼女は自分の話をするうちに、チームの前で話す時も自信を持てるようになったのです」

 1年後にメレディスは会社を辞めたが、部下の女性は順調だった。「彼女は自殺予防について積極的に訴えるようになりました」。メレディスはいまもサイトを運営し、ストレスと不安を乗り越えようとしている人々を助けることについて新著Get Out of My Head(未訳)を出版した。