●あなたが変えられることは何か

 メンタルヘルスをケアするために本人が望むことや必要なことはたくさんある。勤務時間を変更する、単独またはグループで仕事をする、休憩を取って医師の診察を受ける、時々「メンタルヘルスの日」を設ける、などがあるだろう。これらの要求を認められるかどうかは、多くの場合、企業の既存の方針による。

 管理職は「アコモデーション」(個別対応)と「アダプテーション」(適応)の違いを知っておかなければならないと、グリーンウッドは言う。アコモデーションは、メンタルヘルスに関する問題を打ち明けた特定の従業員に合わせて、後から既存の方針の例外を認めること。アダプテーションは、フレックスタイムなど、会社の方針の範囲内で誰でも利用できるツールを前もって調整することだ。

 ある従業員のためにアコモデーションが必要な時は、人事部門に相談することが重要になる(詳細後述)。人事部門は、法的にどのような対応が許されるかを決める国や地域の法律に精通している。

 勤務時間や仕事量の変更は、チームの他の人にも影響を与えるかもしれない。「なぜこの人は遅刻するのか、なぜ待遇が違うのかと聞かれた時に、どう答えるか」を用意しておかなければならないと、ゴールドバーグは言う。

 そのような質問の答えは、「これは個別の対応です」「異なる勤務体系を考えました」など、簡潔なものがいい。同僚から不安が持ち上がった時に、上司であるあなたにどのように対応してほしいか、本人と話をしよう。

 ●周囲に協力を求める

 部下があなたのところに来たのは、あなたが上司だからだ。「セラピストや医師、弁護士は、あなたの役割ではありません」と、グリーンウッドは言う。健康や法律に関する助言はしない。また、あなた一人で解決しようとしない。できる限り人事部門と協力して、可能な解決策を考え、人事部に相談していることを本人にも知らせる。

「理想としては、アコモデーションが必要な場合、あなたが人事部門や本人と協力して解決策を見つけたい。人事部門が過去に同様の状況で提供したことのある『選択肢』を聞けると、役に立つでしょう」。これらの選択肢を本人が思いつきそうになければ、待たずに助言するのもいい。グリーンウッドは以前の上司に自分の不安を打ち明けた時、彼女自身は「既存の枠組みを超えて考えることができる立場ではなかった」。

 小さな会社や、協力的な人事部門がない場合は、何ができるかを考えるのはあなた自身かもしれない。ゴールドバーグの調査によると、小さな会社ではより柔軟な対応が可能なことも多いが、「あなたに部下の求めに応じる余裕がなくて、より難しいかもしれません」。

 ●利用できるリソースがあれば紹介する

 部下に紹介できるリソースが社内にあるかもしれない。「メンタルヘルスの問題をテーマにしたERG(従業員リソースグループ)が増えており、若手社員が立ち上げたものも少なくありません」と、グリーンウッドは言う。こうしたグループが利用可能なら、部下に情報を伝える。セラピーや瞑想アプリなど、会社が提供しているメンタルヘルス関連の福利厚生もあるだろう。

 そのようなリソースがない時は、EAP(従業員支援プログラム)の利用を勧めることもできる。ただし、すべてのEAPの質が高いとは限らない

 従業員のサポートについて重要な役割を果たすプログラムも、それだけでは十分でない。臨床的なケアは専門家に任せることが最善だが、部下の仕事上の経験については、上司としてあなたにも責任があることを心に留めておこう。

 ●「話しやすい」存在になる

 仕事とメンタルヘルスのバランスを取るために手助けが必要な時に、気軽に相談できる上司の下で働けると理想的だが、残念ながらそうした上司ばかりではない。しかし、上司であるあなたがロールモデルになれば、周囲は相談しやすくなる。リーダーやマネジャーがメンタルヘルスの問題を率直に話すことの重要性を、グリーンウッドは強調する。

「自分がメンタルヘルスに問題を抱えている時は、そのこと自体を話す必要は必ずしもありません。でも、子どもの寝つきが悪いことや、自分が燃え尽きるのではないかという不安を共有することはできるでしょう。上司も誤りを犯す普通の人間なのだと、伝えるのです」。このように弱さを見せることが小さなきっかけとなって、相手も心を開くことができ、より安心して自分の話を共有できるようになる。

 あなたが組織の中で力のある地位にいるなら、メンタルヘルスに関する個人的な経験を共有することにより──そのような問題と直接向き合うこともできるし、セラピーを受ける日は予定を断るといった形もある──組織内でメンタルヘルスの話をすることがふつうのことになる。メンタルヘルスの問題を抱えていてもトップレベルの成功を収められることを実証できて、長期的な変化につながるだろう。

 ●覚えておくべき原則

【やるべきこと】
・問題をどこまで共有したいのかは、本人の意思に任せる。
・どのように柔軟な対応ができるか、慎重に考える。
・人事部門に相談しなければならない場合もあり、秘密を厳守できないかもしれないと明確に伝える。

【やってはいけないこと】
・あなたに打ち明けたことを大げさに扱わない。あくまでもふつうの会話にする。
・よく考えて人事部門に相談するまで、具体的な対応を過剰に約束しない。
・あなたが上級管理職の場合は特に、メンタルヘルスに関する自分の経験を隠さない。