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2020年の春と比較すれば、失業率全般の数値は改善した。ただし、職を失ってから6カ月以上にわたり次の仕事に就けていない長期失業者の割合は増加し続けている。学歴や職歴が武器にならないどころか、再就業の足を引っ張ることすらあり、特に知識労働者や高齢の労働者は厳しい立場に置かれているのだ。本稿では、コロナ禍で失業の長期化を招いている要因を明らかにしたうえで、失業者の支援策を提示する。


 新型コロナウイルス感染症の流行により、米国の雇用に壊滅的な打撃が及んでいる。一時的な自宅待機を余儀なくされたり、解雇を言い渡されたりする人が増えているのだ。6カ月以上にわたり職に就けていない米国人は、400万人以上。筆者の推計によれば、その中にはホワイトカラー労働者も推定150万人含まれている。

 2020年春の最悪の時期に比べれば、失業率全般の値は改善している。しかし、見過ごせないのは、長期失業者の割合が増加し続けていることだ。現時点で、その値は40%を上回っている。これはグレートリセッションの時期を別にすれば、米国ではこの60年間見られなかった水準だ。

 言うまでもなく、コロナ禍の失業増の原因は、グレートリセッションの失業増とは異なる。それでも長期失業者に――とりわけ知識労働者と高齢の労働者に――スティグマ(負の烙印)が押されることは今回も同じだろう。

 米国人は、「正しい」行動を取れば(たとえば、勤勉に働く、よい大学に進学する、よい会社に採用されるなど)、いきなりキャリアが崖の下に転げ落ちるようなことはないと信じたがる。ところが、現実には膨大な数の人たちが、そのような悲劇を経験しているのである。

 いま米国では、ただでさえ社会の高齢化が進行する中で、再び失業危機が深刻化しつつある。このような状況では、長期失業が個人に及ぼす影響を社会学的に考察することが極めて重要だ。この点は、企業にとっても、職を失った個人にとっても大きな意味を持つ。

 筆者はこの15年間、米国のホワイトカラー労働者の失業について研究してきた。その研究から見えてきたのは、失業者にとってとりわけ大きな試練の一つは、企業や元同僚たちが長期失業者の現実について正しく理解していないことだ。長期失業者にスティグマが押されているために、失業者が孤立し、職探しでつらい思いをして、ウェルビーイングが低下しているのである。

 では、長期にわたり失業が続くことが本人に及ぼすダメージの大きさがもっとよく理解され、さらに筆者が試験的に取り組んでいる社会学の知見に基づいた長期失業者支援策が導入されれば、失業者のウェルビーイングが改善され、いずれ職に就ける可能性も高まるのだろうか。

 この問いに答えるために、筆者は2013~15年に米国ボストン地区の120人以上の求職者に話を聞いた。グレートリセッション後に長期失業者がどのような経験をしたかについて、理解を深めようと考えたのだ。

 調査対象者の年齢は40~65歳。6カ月以上失業状態にあり、失業する前はホワイトカラーの職に就いていて、調査時点で積極的に職探しをしていた人たちである。また、これに加えて、筆者はリクルーターたちへの聞き取り調査も行った。

 この調査で浮き彫りになったのは、既存の採用慣行が強力なバイアスの影響を受けていて、時代遅れで、不透明だという実態だ。人脈重視の採用が行われている結果として、求職者が疲弊し、いら立ちを募らせ、その人たちの個人としてのウェルビーイングと社会全体のウェルビーイングの両方に悪影響が生じていたのである。