●基本を忠実に守る
マネジャーも従業員も、社交的な会話がネガティブなものに転化しないように注意しなくてはならない。雑談は、天気やスポーツ、テレビ番組のような当たり障りのない話題を、礼儀正しく、表面的な範囲に留めて話すべきである。
特に会社や他の従業員について、ゴシップに発展させるのは禁物だ。敬意の欠如、反感、不信感を生じさせる。マネジャーはまた、宗教や政治、恋愛関係といった物議を醸す可能性のある話題は遠ざけるべきだろう。
もう一つ避けるべきは、過剰な自己開示だ。友人と一緒にコーヒーを飲んでいる時に深刻な悩みを打ち明けるのは構わないが、知り合いとの挨拶でそれをしては場違いだろう。誰かから「調子はどうですか」と聞かれて、1日の不満を大声でぶちまけるのは無作法だ。
とはいえ、コロナ禍の現在は「あなたとあなたの家族が安全で元気であることを願っている」というように、心配や不安な気持ちを口にすることが一般的になっている。
●利点を強調する
他者と距離を置く傾向がある従業員を説得して引き入れるには、雑談が従業員の幸福度と会社の業績の両方を高める点を強調するのがよい。
社交的要素のある休憩を日常に組み込み、自分の社会的健康は自分で守るように従業員を奨励する。締め切りのプレッシャーに追われている時にそう言われても腑に落ちないかもしれないが、筆者らの研究は、そうした休憩が元気を回復して、バーンアウトを減らすことを示している。
ウォータークーラーのような新しいオンラインアプリは、従業員同士が共通の興味や趣味、フィットネスの目標などについてチャットする時間を見つけやすくする。アプリが会話の時間枠を設定するため、生産的な作業時間が奪わることはない。対面の場合には、それをコントロールするのは難しいものだ。
従業員にも、次のように自問させるとよい。「今日はいつもより、つながりを感じただろうか、感じなかっただろうか」「サポートが必要な場合は、誰に助けを求められるだろうか」「自分にとって、最も重要な人間関係は何だろうか」
その間、定期的に様子を伺うといったシンプルな方法でも、従業員の孤独感を和らげるのに大いに役立つ。簡単だが、極めて有効だ。従業員が最も帰属意識を感じるのは、同僚がメッセージやメールで自分を気遣ってくれた時だという調査結果もある。
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終わりなきズーム会議と新たなワークライフの課題に立ち向かっている現在、雑談の価値を過小評価しないようにしたい。リモートで仕事をしているからといって、カジュアルな会話はもう重要ではないということはない。むしろ雑談は、日々バーチャルな分水嶺を挟んで、つながりを確認し合う機会として、かつてないほど重要かもしれないのだ。
HBR.org原文:Remote Workers Need Small Talk, Too, March 25, 2021.