HBR Staff

雑談は気が散る、集中力が削がれるとして嫌う向きもあるが、その価値を過小評価してはいけない。ポジティブな気持ちになり、バーンアウトを防ぐだけでなく、互いのつながりが深まり、何気ない会話から思いも寄らぬイノベーションが生まれることはよく知られているだろう。問題は、在宅勤務をしながら、いかにして気軽な世間話やおしゃべりを自然に発生させるか、だ。本稿では、バーチャル環境で雑談の価値を高め、互いのつながりを確認し合う機会をどう構築すべきか、4つのアドバイスを紹介する。


 コロナ対策として社会的距離を取るようになる以前、雑談(スモールトーク)は職場の日常だった。

 駐車場に車を停めて、オフィスに向かいながら同僚と挨拶を交わし、会議が始まるまでの時間、互いの週末について話を聞き、自分の席では周りの人たちとそれぞれの家族の話をしていた。わずか数分間のことかもしれないが、職場の人たちとのつながりを感じられる、非常に重要な時間として機能していた。

 雑談が私たちにとって重要な理由は、ほかにもある。雑談のおかげで緊張がほぐれ、交渉採用面接営業人事評価といったより深刻な話題に移行しやすくなる。また、同僚に関して、たとえばギターを弾く、犬好きといったちょっとした情報を知ることで、相手との距離が縮まり、互いの信頼感が深まる。

 オフィスで偶然出会った相手と会話が自然発生することで、コラボレーションが誘発され、創造性やイノベーション、パフォーマンスの向上にさえつながると結論づけている研究もある。

 多くの人が雑談に元気づけられ、相手から気にかけてもらっていると実感するという。中規模の会計事務所で働くある従業員はこう話してくれた。「一緒に働いている人の生活を事細かに知る必要はないが、互いに同じ人間だと思えるのは、誰もが同じ人間だとたしかに感じさせてくれる」

 コロナ禍によって引き起こされた在宅勤務ブームの中、私たちの多くが「雑談ロス」に陥っているのも不思議ではない。

 しかし、雑談に対して深い疑念を抱く人もいる。雑談は気が散る、噂を広める、時間の無駄、そして空々しい気づまりだなどと言う。おしゃべりを避けるために、開始時間ぎりぎりまで会議に来ない人さえいる。

 こうなると、雑談はある種の社会的矛盾ということになり、「結局のところ、従業員の日常生活に役立つのか、害になるのか」という疑問が生じる。