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コロナ禍の長期化によって、医療やソーシャルワーク、教育といった公共サービスの最前線で働く人々に大きな負荷がかかっている。燃え尽きが増加し、士気を維持できない場合もあるだろう。従業員のモチベーションを高めるには、民間セクターを中心に金銭的報酬が使われてきたが、社会的価値に重きを置く公共セクターで働く人々にとっては、象徴的報酬のほうが有効だと筆者らは指摘する。つまり、感謝の気持ちや敬意の念を伝えることで、自分の価値や仕事の影響力を認識し、生産性も高まるというのだ。本稿では、象徴的報酬の効用について解説し、導入にあたって注意すべき要因を論じる。


 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが2年目に入り、医療従事者教員ソーシャルワーカーといった公共サービスの最前線で働く人々には、かつてないレベルの重圧がのしかかっている。

 同時にあらゆる業界で、組織は規模縮小や再編成を余儀なくされている。これは、従業員の燃え尽きが増加している中、その支援に使える資金が減少していることを意味する。このような試練のさなか、マネジャーは従業員のモチベーションを維持するために何ができるだろうか。

 筆者らはこの疑問に答えるべく、子どものソーシャルケアに関する研究を行う非営利組織ワット・ワークス・フォー・チルドレンズ・ソーシャル・ケア(WWCSC)と協力して一連の研究を行い、ソーシャルワーカーの全体的な幸福度を高めるために設計された、軽い接触によるコスト効率の高い介入の影響を調べた。

 従来、多くの組織は(特に民間セクターにおいて)、従業員の士気や業績を高めるために金銭的インセンティブを用いてきた。しかし最近の研究では、お祝いのカード、公の場での表彰や証書といった象徴的報酬によって、内発的動機づけ業績従業員定着率が大きく向上することがわかってきている。

 そこで筆者らは、組織が金銭的インセンティブに代わって、従業員への感謝や敬意の念を表す象徴的報酬を授与することの影響を計ろうと考えた。

 過去の研究では、大学生を対象にした調査や研究室実験を通じて、こうした恩恵をまとめてきたが、フィールド調査のほとんどは民間セクターで行われていた。それらの研究結果は有益だが、パンデミックによって甚大な影響を受けている最前線で働く人々を多数雇用している非営利組織や公共セクターにはうまく適用できない可能性がある。

 研究によれば、医療やソーシャルワーク、教育の分野で働く人々は、ポジティブな影響を他者に及ぼす仕事をすることに高いモチベーションを持ち、社会的評価により高い価値を置いている。

 その一方で、民間セクターで働く人々に比べると、給料によってモチベーションが上がることは少ない傾向にある。つまり金銭的インセンティブの効果は比較的低く、こうした分野で働く人々を支えるためには、象徴的評価が特に重要だと考えられる。