筆者らは、公共サービス部門で働く人々に対する象徴的評価の効果について理解を深めるために、ソーシャルワーカーに感謝の気持ちを表すパーソナライズされた手紙を自宅宛てに送った時のインパクトを調べる研究を行った。対象者となるソーシャルワーカーは無作為に選ばれ、半数が直属の上司から手紙を受け取り、残りの半数は手紙を受け取らないように設定した。

 その手紙にはポジティブなフィードバックを示す2つの文章が含まれていた。第1の文章は、次の選択肢の中から選ばれた。「あなたの働きぶりのおかげで、あなたが担当している子どもたちは、常にポジティブな影響を受けています」「あなたの絶え間ない献身と熱心な働きぶりが、地域の子どもたちや家族の日々の生活を向上させています」。第2の文章は、上司自身に書いてもらった。

 このようにして、ある程度標準化されているものの、パーソナライズされた手紙になるようにした。

 筆者らはそこで何を発見したか。このシンプルな介入から1カ月後、手紙を受け取ったソーシャルワーカーは、手紙を受け取らなかった人々に比べて、自分は大きな価値があると認められ、仕事に対する評価も高く、所属する組織からは強いサポートを得られていると回答した。

 手紙を受け取ったソーシャルワーカーの主観的ウェルビーイング、帰属意識、内発的動機づけ、病欠率に対するポジティブなインパクトも見られた(ただし、統計的な有意差は見られなかった)。

 さらに過去の研究によれば、従業員が高く評価され、支えられていると感じられるようにすることは、従業員それぞれのウェルビーイングだけでなく、組織全体にとっても重要である。

 自分が所属する組織に対する満足度が高いと、従業員の生産性はより高く、離職率は低くなることが、研究によって明らかになっている。さらに、従業員が高く評価されて権限を与えられることで、組織全体のモチベーションが高まり、業績が向上することが示されている。

 明らかに、象徴的介入は効果がある。ただし、そのインパクトを最大化するには、その組織固有の状況に合わせて、取り組みをカスタマイズすることが重要だ。低コストの象徴的報酬を試すにあたって、マネジャーはいくつかの重要な要因を考慮に入れなくてはならないことを、研究が示唆している。