●小さなことから始める
おそらく最も重要なのは、象徴的報酬の導入を手間のかかる大変なタスクだととらえないことだろう。象徴的報酬のポイントは、費用対効果が大きいこと(基本的にコストはかからない)、実行が容易であること、そして適切に運用すれば大きな効果を発揮することにある。
どこから始めるべきかわからない場合には、次のようなハードルの低い案から1つを選んで、試してみてほしい。
・従業員の最近の優れた業績に感謝の意を表すべく、パーソナライズされた短い手紙を書く。
・次のチームミーティングで、従業員の貢献を公に評価する。
・士気を鼓舞するミーティングを開き、チームの成功を祝う。
象徴的報酬を効果的なものにするには、組織固有の状況に合わせて設計する必要がある。たとえば、ソーシャルワーカーや教員のように公共セクターで働く人々に対しては効果的でも、他の職場にはそぐわないかもしれない。
さらに筆者らの研究結果から、象徴的報酬があれば公正な金銭的報酬は不要だと誤解してはならない。実際、多くの場合に金銭的インセンティブがモチベーションを上げるうえで効果的であることが、研究で示されている。
しかし、とりわけ予算に余裕がない時には、非金銭的報酬は従来の金銭的インセンティブの代わりになりうる、魅力的かつ効果的な選択肢だ。さらに、資金があっても、金銭的報酬が組織文化にとって高くつく場合もある。
たとえば、ある研究で、公共セクターの組織では功労賞与がモチベーションや士気を実際には低下させていることがわかった。多くの従業員にとって、インセンティブを受け取るのに必要な業績レベルを達成することは、ほとんど不可能だと広く信じられているからである。
対照的に、筆者らの研究では感謝のカードのようなシンプルな象徴的介入であっても、真の意味でインパクトを与えることができると示している。しかも、金銭的報酬のマイナス面が表出するおそれもなく、雇用者はコストを大きく抑えることができ、時にコストがまったく発生しない。
現在のように、極めて困難で多くのストレスにさらされている時には、ささやかな感謝の気持ちを表すことが大きな効果をもたらすのだ。
HBR.org原文:Research: A Little Recognition Can Provide a Big Morale Boost, March 29, 2021.