●属性1:選択肢

 神経可塑性と呼ばれる神経科学の概念に関する文献は、脳は再構築が可能で、私たちの生涯を通じて適応性があることを立証している。つまり、変化の時期に人々は古い規範を手放し、新たな規範を受け入れることができるのだ。

 それは、必ずしも容易なことではない。だが、研究によれば、変化の過程で自分が積極的に意思決定に関与していると感じれば、変化をより受け入れやすくなるという。人々に選択肢を与える移行対象は、変化の過程で必要なサポートを提供することができる。

 組織においては、従業員にどこで、どのように働くかの選択肢を与えることがその一例だ。筆者らが調査を行ったある企業では、小規模だったオフィススペースを拡大し、従業員に個々のスペースを割り当てるのではなく、仕切りのあるスペースかドア付きのオフィスを選択できるようにした。

 これは大きな変化の中で、従業員に自律性と明確な役割を与えた。企業が将来に向けて、従業員の働く場所や時間について大きな決断を下している今日においては、明らかに重要なことだ。あなたはこのプロセスで、従業員にどのような選択肢を与えることができるだろうか。

 別の例では、米首都ワシントンD.C.を拠点とするグローバルなコンサルティング会社のあるチームが、5年間にわたるプロジェクトで非常に実りある成果を上げた後、ともに働いていた組織から離れることになった。

 プロジェクトチームは大きなショックを受けた。移行に伴うそうした感情に対処できるように、コンサルティングチームの共同リーダーは、チームの将来に向けた長期的な成長計画の選択肢をいくつか提案した。チームメンバーはとりわけ、これから別の道を歩こうとしている信頼できるリーダーから、自分たちの将来について発言権を与えられたことで、モチベーションが向上したと感じることができた。

 他の組織でも、特に愛着のあるものが終わりを迎える時に、ある種の決定をより大きなグループに委ねることを検討するかもしれない。次のステップを形成するうえで、自分が役割を果たしていると感じることができれば、特にネガティブなことや予想外のことが起きた時には、人々が前に進む力となる。